第87話 孤立 (2)

 健太が大事に抱える籠の中には相変わらず女性物の衣服、下着が籠の中一杯、溢れんばかりに詰め込まれている。


 まあ、いると言うことは、アイカやエリエ、プラウム、サラ、シルフィーにウルハ……。



 その他諸々の女王アイカの可憐な一族の女性達、アマゾネス達とのお付き合い、関係は中慎ましく続いていると見た方がよいみたい。


 そう、確かに男王でなくなった健太にはハーレム王になる資格は無くなった。


 でも、子供を産み、子孫を後世に残すことができるアマゾネス達を神聖化しているオーク種族は、太古からが強く。男性が女性の寝所……。ウォンのように寝ているシルフィーを強引にわが物にしようとする夜這い結婚は禁止事項になるのだが。


 子を産み、自分達で養い。育てることが可能な神聖な者達、アマゾネス達に限っては、自分達が気に入った漢戦士、グラディエーター達の許へと朝昼晩と館を訪ね。逢引きをすることは禁止事項ではない。


 だからアイカは、その日の酋長としての仕事が終われば神殿を抜け出て、愛する彼、元夫である健太の許へと通う。通い妻生活をあの日、健太がでなくなった日から続けているのだ。


 女王アイカの姉妹、義母、従姉妹達。その他の者達もアイカの目を盗んではこのように自身の汚れた衣服に下着と相変わらずオムツも結構な量で入っているみたいだから。


 健太がでなくなったからと言っても安易に他の男、オス達を求めると言うことはないみたいだ。健太の許奥さま達はね。


 どころか? 


「健太、いるか?」と、女王アイカは暇があれば愛する健太の小さな屋敷の扉を勢いよく開け──。


 彼がいるか、いないかを確認……。健太がいれば。


「健太、今日も悪いのだが、神殿内の掃除を頼む」と嘆願をする。


 そう、自分達女王、酋長姉妹が暮らす神殿、寝所、神聖な場所には元夫である健太以外の男を入れることは完全に拒み、拒否……。



「アイカ、宮殿の掃除や衣服、下着の洗濯は俺がしてやろうか?」と、ウォンが遠回しに求愛のプロポーズをしてきても。


「御免ウォン、宮殿の掃除やわらわの衣服、下着の洗濯、身の回りの世話も。わらわはあのひと以外に今はさせる気がないので済まぬ」と。


 彼女は只今自分はハーレムを布く気はない。健太に一途な妻なのだと断固拒否をしてみせるのだ。


 だからウォンは、自身の思い通り……。



 そう、別れた。離別した元カノ、婚約者、妻だと言って過言ではなかったアイカがいつまで経っても自分の許へと戻らない。物にもならないから。


 彼は歯痒くてしかたがない。


 まあ、ないと言う事は?


 彼は、ウォンは、自身の婚約者をNTRされた男の、健太に対する憎悪、恨みつらみ、憎しみ、復讐心は日増しに積もるばかりだから。


 元男王だった健太と女王アイカの中慎ましい恋人、カップルに対しての暗雲がまた立ち込め始めだすのだ。この通りにね。


「お~い、健太?」と。


 洗濯籠を抱え、一二の三と、「よーし、がんばるぞ!」と、意気揚々と自身の奥さま達のためにと洗濯へと向かうへと、何処からともなく彼を呼ぶ声がするから彼は歩行をする。続ける行為を辞めて足を止め、周りをキョロキョロしながら様子を窺えば。


『!!』だ。


 そして「はっ!」だ。


 はっ! と、彼が脳裏で思えば、自身の顔色が変わり強張った表情……。



 健太は自身の顔を引きつらせ苦笑いを浮かべ。


「みなさん、僕に何の用かな?」と。


 洗濯籠を抱え、立ち止まっている健太に対して自身の口の端を吊り上げニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら手招きをする。してくるのだよ。


 オークの若い漢戦士がね。それも一人二人ではなく沢山の者達……。



 そう、男王になれなかった男、ウォンのことを師、上司として慕う。彼の取り巻きでもある。この小さな国、集落の中でも戦慣れをした精鋭、強力な漢戦士達多数がニヤニヤ、ケラケラと健太のことを嘲笑い。侮りながら手招き呼ぶ──。


「ほら、チビ、何をしている早くこっちに来い!」

「今日も俺達がお前のそのひ弱で軟弱な身体を鍛えてやるから早くこっちにこいよ~」

「何をしている健太。早く来いよ。~」と、彼のことを、苦笑を浮かべながら名指しで呼んでくるのだ。




「えっ! いや、ごめんなさい。僕は洗濯しにいかないといけないから忙しくて……。だからごめんなさい。僕は先を急いでいるのですいません」と健太は、自身のことを苦笑を浮かべ手招きをする漢戦士達複数へとペコリと頭を下げると慌ててこの場から立ち去ろうと試みる。


でもね、若い漢戦士は、沢山のアマゾネス達からの称号がなくなっても未だに好意を抱かれている人種の健太のことが気に入らない。憎くて仕方がない。もうそれこそ亡き者、骸にしてジョングルの奥地へと放置、破棄したいほど、この小さくて可愛い象牙色の肌を持つ女の子のようなか弱い少年に対して嫉妬心を募らせているようだから。


女性の嫉妬心も大変に怖く、恐ろしいものだが、男性達の嫉妬心。好きな女性が自分の物、所有物にならない時の彼等の嫉妬心も大変に執着した恐ろしいものだ。



だから若い漢戦士は彼を、健太のことをこの場から安易に逃がす訳はなく。


「お~い、健太~。何この場から逃げようとしているのだ」と、この場から慌てて逃げる。逃走を図ろうとする健太の前にグラディエーターが一人立ち塞がり。関所、壁になれば。


「おいおい。逃げるなよ。チビ。俺達がわざわざお前の事を強力、強くなるよう鍛えてやるといっているのだから。チビは感謝しろよ」





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