第85話 困惑する酋長……(9)

 女王アイカ自身がもう既に策士であるウォンの邪な策略にはまっている状態で、彼女の元夫健太自身も罠に落ちている最中であることは間違いない。確定なのに人種のひ弱な彼を、健太のことをアイカや妹君、従姉達の庇護、守護を外しても大丈夫なのだろうか?


 まあ、こんな先行き不安なことを思案をしていれば。


「お、長」

「アイカ姉さま」

「アイカ姉どう言うこと? サラは意味がわからないよ?」

「おい、おい。アイカ。家のひとの男王の称号を取り上げ。只の一般人、男にしたらうちらは、家のひとの女房、妻になることができないじゃないか」と。


 エリエ、プラウム、サラ、ウルハと華麗な酋長の一族の女性達が、自身の顔色を変えながら健太の男王から只の男への降格に対して不満をあらわにしながら意を唱え始める。


 それでも、この小さな国、集落の酋長さまは、自身の首を縦に振らず。自身の腕を組み、左右に首を振りながら。


「いいや、駄目だ。この度の騒動は健太自身が、自分が全部悪いし。原因なのだから。責任の方は男らしく自分自身全部取ると元男王らしく威厳を持って私に告げてきた。それをわらわも妻としてではなく女王、酋長として了承した訳だから。今更健太への罰、罪を取り下げるような事は出来ないし。そんな前例を作れば今後の集落内の政に支障が出てしまうようになるから今の今は無理だ。当分健太は普通の民としてこの集落内で静かに暮らし。民達の信頼を得れば、また男王への昇格を考慮するつもりだから。それまでは離別と言う形になるが。これもこの集落、民達の為だ。だから堪えてくれ皆……」と。


 女王アイカは妹達には大変に悲しい顔、声色で健太との別れ、離別の方を少しの間、期間待ってくれと嘆願……。



 でも彼女は、妹達からウルハとその取り巻き達、傾奇者、不良、ヤンキー姉ちゃん達に対しては、彼女達へと視線を変えると同時に、自身の口の端を吊り上げ、薄笑いを浮かべ、勝ち誇った顔をしながらウルハ達へと集落、民のために健太の離婚、別れを耐え忍んでくれと告げるものだから。


「チッ!」と、ウルハは苦々しい顔と様子で舌打ち。女王アイカへと無言で睨み付ける悪態をつけば彼女は踵を返し。


「行くよ。皆~」と、自身の仲間達へと声をかければ。


「そこを退きなぁ!」と、自分達の前を壁のように立ち塞がった状態でいる野次馬達へと不機嫌極まりない声色で咆哮すれば、ウルハの壁になっていた者達は慌てて左右に逸れ、退避をし、彼女への道を作るから。


 この場、この騒動の場から自称健太の妻達は、不機嫌極まりない顔、様子で皆が、女王アイカに背を向け、挨拶もすることもなくぞろぞろと立ち去り。この場を後、消えていくのだった。


 そんな様子を女王アイカは自身の括れた腰に両手を当てながら睨み続け。ウルハ達の姿が自身の紅色の瞳の視界から消えてなくなると。ホッとして安堵……。

(本当に大変な事にならなくてよかった。これも健太のお蔭だね)と、一応は元夫のことを想う。慕う。褒め称えるのだよ。


 でも女王アイカは嫉妬心の強い女性……。



 だけど彼女は自身の本当の気持ちを表に出さない仮面をかぶったまさに女王陛下だからね。


「健太もそう言う事だから。今を持ってわらわとあなたは離婚、離別する……。屋敷の方は直ぐに用意をするから今後はその屋敷で、一人で暮らすように。解ったな、健太?」と。


 女王アイカは自身の元夫健太に対して顔色一つ変えずに威厳のある……と、言うか? 浮気者を許す気もサラサラない女王アイカは冷徹、冷ややかな目で健太のことを見詰めながら淡々とした口調で告げる。


 だから健太も「うん」と頷き。下を向くしかない。


 でっ、これをもって健太は女王アイカの庇護がなくなるために悲惨な日々、彼自身が自害をしたくなるような苦痛、心痛な日々が始まっていくのだった。



 ◇◇◇

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