第78話 困惑する酋長……(2)

「えぇ~と。えぇとね」と、健太も言葉を漏らしながらアイカから目線をずらし俯いてしまうのだよ。


 自身のお妃さまに、サラとウルハの喧嘩が自分自身が原因なのだと言いづらい。告げにくいから。


「あ、あの」とも、しどろもどろと俯いたまま声まで漏らしてしまうのだよ。


 自身の妻、お妃さま……。



 そう、この小さな国、集落の女王、酋長の前で男王らしくない振る舞いをしてしまう失態をするものだから。


「健太ー!」と、女王アイカに怪訝な表情で荒々しく一喝! ちゃんと自分の顔を上げて男らしくアイカへと報告をするようにと無言の指示、下知が放たれる。


 だから健太は自身の肩をピクンと驚いたように跳ねながら顔を上げ、自身の顔色を変え、情けない表情、様子でね。恐る恐るとアイカの方へと視線を変える失態をまた犯す……。



 そう、この小さな国、集落に住み暮らし。生活を送る者達の大半がサラとウルハの喧嘩、争いを観戦するために集っている最中で健太は男……だけではないね?


 いくら自分に対して怪訝な表情で一喝しながら荒々しく問いかけてきた相手がこのが強いオーク種族の女王、酋長だとしてもアイカは健太の妻、妃、物なのだから。彼は妻相手に毅然とした態度で男王らしく威厳のある態度で振る舞いながらアイカへと言葉を返す。告げる。をしないといけない様子をこの場にいる者達へと見せる必要性があるにも関わらず。健太は自身の妻を含めてこれだけの人達、野次馬達に対して、自分が妻にも頭が上がらないひ弱、軟弱、弱弱しい。男王らしくな振る舞いを見せるから。


 健太や女王アイカ、エリエ、プラウム、サラにウルハを取り囲む民衆、野次馬達の間からヒソヒソと小声での現男王健太への不安や危惧……だけではない。


 前男王であったアイカの父や彼女の元恋人、婚約者であったオーク種族の漢戦士最強の男だと世に謳われているウォン達と健太を見比べ品定め品評すれば彼が余りにも貧弱、貧相、弱弱しく見えるから。


 健太の男王としての才能、才覚を疑う猜疑心のある目や溜息、呆れ声まで漏れ始める失態を健太はしてしまう、だけではないよね?


(もう健太はわらわの夫であり。男王なのに。あのひとが言う通りでこの騒ぎを鎮静、治めることもできずに自身の顔色を変えながら呆然と二人の様子を窺っているだけなんて、何を考えているの、健太は……。本当に情けないと言ったらありゃしない)と。


 女王アイカは自身の脳内で健太への不満を呟いているのだよ。


 彼女の元彼、婚約者のウォンからアイカ自身が何を言われた。聞いたのかは、元深い仲だった二人にしかわからないことだけれど。


 女王アイカは自身の主である健太が、この騒動、喧騒を男王として鎮静化、治めることができていないから不満を募らせているのだよ。


 余りに自身の夫健太が、男王らしい振る舞いができずに弱々しく、軟弱、か弱い男過ぎるので彼女、女王アイカは未だ不機嫌極まりない顔、様子でね。


 そう、彼女が義母のシルファーの勧めで新たな男王は他種族の若くてか弱く。可愛い。イケメン少年を婿として迎えることを決めた。決意をした日のことをすっかり彼女、女王アイカは忘れ。


「健太、原因は何? ウォンはサラとウルハの喧嘩の原因はあなただと言っているのよ。だから今直ぐわらわに原因を述べなさい。健太ー! わかった? わかったわねぇ?」


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