第77話 困惑する酋長……(1)
「ちょっと二人とも何をしているの」
「やめるんだ。二人とも」
サラとウルハの少女のような麗しい少年をかけた意地の張り合い。ぶつかり合い。殴り合い。蹴り合い。激しい争い。喧嘩に対して歓喜、声援をあげるのではなく。
『待った!』
『辞めろ!』
『辞めるんだ!』の大きな声での静止、制御、諫めの声がやっと吐かれる。放たれるのだよ。
この小さな国、集落の女王、酋長であるアイカの叫びと、彼女の妹君であるエリエの声を大にした諫めの言葉によってね。
でっ、最後には、二人に遅れてこの場、あの場、健太の前方で争い。喧嘩をしているサラとウルハがいる場所へと着いた。辿り着いたプラウムが、「はぁ、はぁ」、「ぜいぜい」と荒くなっている息遣いを整えながら自身の妹を見詰め。
「サラやめなさい」と言葉を放つ。
「あっ! アイカさん、エリエさん、プラウムさん」と、健太がこの騒めき、喧騒、喧嘩、騒動を止める。沈静しにきた三人、自身のお妃さま達へと声をかければ。
女王アイカとエリエ、プラウムの三人は健太の方をチラリと凝視──。
でも、喧嘩の最中をエリエに身体で間を入られ遮断──静止化、鎮静化された二人は「ぜいぜい」、「はぁ、はぁ」と息遣いが粗い状態で不満、不貞腐れた顔で、サラとウルハは相変わらず睨めっこ。ガンのつけ合い飛ばし合いをしているようだから女王アイカは直ぐに二人へと視線を変え。
「ウォンがサラとウルハの二人が喧嘩をしているから止めるようにと教えてくれて慌ててきたのだけれど。二人の喧嘩の原因は何?」と。
自身の目の先でエリエを挟んでガンのつけ合い。飛ばし合いをおこなっている妹と従姉へと女王アイカが問いかければ。
「…………」
「…………」
二人仲良くこの調子でね。二人は女王アイカに問われても無言のまま、お互いを睨んでいる。睨み合いを続けているだけだから。
女王アイカは「はぁ~」と大きな溜息を漏らしながら。相変わらず自身の顔色を変えながら五人の様子を窺っている健太へと視線を変え。
「健太~?」と声をかける。
「……ん? なにアイカさん?」
自身の妃から声をかけられた健太は、サラとエリエ、ウルハから視線を変え、女王アイカを凝視すれば。
「健太、あなたは最初からこの場にいたみたいだから。二人の喧嘩の原因は何かを知っていると思うから教えて」と、女王アイカが困った顔、声色で健太へと訊ねると。
(お願い)
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