第76話 男王になれなかった男の策(5)

 自身の彼女、婚約者を盗られ、男王の座まで奪われた男の思惑通りに若い漢戦士達がみなが天を仰ぎ、俯きながら悲しい声音、様子で男王健太のことを呪うように嘆き、不満を漏らし始めだすのだよ。


 まだ相変わらず、自身の顔色を変えながら二人の喧嘩を呆然、唖然と見詰めているのはもうやめた。終わったようで、健太は大変に困った顔をしながら。


「サラちゃん、ウルハさん頼むから喧嘩の方はやめてよ。おねがいだから。二人とも仲良くしようよ」と告げながら二人の争い喧嘩を止めている健太に対してウォンも含めて漢戦士達は嫉妬心を募らせ憎悪、憎しみに満ちた顔をしながら呻るように不満や嘆き。暴言、罵声を放つ。咆哮をしても仕方がないのにね。


 だって健太は異世界日本でからきた少年であり。彼の未だ幼さを残す子供染みた容姿、様子を見ればわかる通りで彼自身も思春期であるからキス、接吻ぐらいは興味はあるのだが。


 それ以降の行為。夫婦の営み。男女の一線を越えるような色艶的な交わり。子供ができる行為は恐ろしくてできないなのだよ。健太はね。ましてや彼は、オーク種族に古くから伝わる婚姻、結婚の儀式、行為である女性の大事な宝物である衣服、下着を洗濯して欲しいと手渡しされて、洗い返却すると夫婦になると言うことを知らない洗濯屋健ちゃんだから彼に嫉妬心と憎悪、殺意を向けるだけ無駄、と言うか?


 健太のことが可愛そう。思わず彼、健太に対して同情をしてしまいそうになる。


 しかしだ。ウォンは含めた若い漢戦士達の一度火が付き燃えあがった。自分達よりも武と力に劣る人種の少年健太への嫉妬心、憎悪、殺意の火は安易に収まる訳ではなく。更にメラメラと燃えあがり天空まで昇ってしまう。


 だってサラとウルハの女の意地をかけた激しい争い。喧嘩はね。只今自身の顔色を悲しい顔色、悲痛なものへと変化させながら。


「二人とも、もう喧嘩はやめてよ。おねがいだから。たのむよ。二人とも……」と、悲痛な声色で嘆願をしている健太のためにおこなわれていると知っている。わかっている。悟っているから。


 若い漢戦士達は彼を、健太のことを許さない。


 だからウォンは自身の奥歯を強く噛みしめ。拳を握り。自身の身体を震わせながら嫉妬、殺意、憎悪に耐え忍んでいる若い漢戦士達へと自身の口の角を吊り上げニヤリと微笑みながら。


「あの、なぁ、お前達……」と、彼は小声で話しかけるのだった。



 ◇◇◇



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