第75話 男王になれなかった男の策(4)

 健太に妻を、彼女を、好きな人……。自分達のセックスシンボル、アイドルを取られた。盗まれた。寝取られたとワッと騒めき、喧騒の最中──嫉妬心をあらわにしている若い漢戦士達のことを横目でチラリと見詰めたウォンなのだが。本当は彼もチッと舌打ちをしながら。


(あのクソガキが歯痒い。殺してやりたい)と。


(シルファーの奴、もしかしてこの俺に策を弄してきたのではなかろうな? もしそうならば許さん)と。


 ウォンは自身の脳裏で苦々しく思っているから自分の周りにいる。集っている若い漢戦士達と一緒に、自分がなることが叶わなかった男王の座、だけでないないね。彼の場合は……。



 そう、今まで何度も説明をした通りで彼は、自身の彼女、婚約者、妻だと言っても過言ではない。大変に仲の良い間柄だった女王アイカを健太に寝取られ、奪われている訳だから嫉妬心、不満、不快、あらわにしながら現男王へと悪態をつきたい衝動に駆られているのだが。


 ウォンは、そこはグッと奥歯を強く噛みしめ、拳も強く握りながら耐え忍び。健太へと嫉妬心をあらわにしながら不満を漏らしている。悪態をついている若い漢戦士達へと自身の口の端を吊り上げながら。


「そりゃお前達、あのチビの周りにいる女達は全員、アイツの妻、物だから一緒にいるんだよ」と、苦笑を浮かべながら告げれば。


「お前達、本当に可哀そうな奴らだな」と。


 この場にいる若い漢戦士達のことを哀れむ、ではないか? ウォンの様子を凝視すればね。若い漢戦士達のことを侮り、蔑むように嘲笑いを浮かべ。彼らの健太への嫉妬心と不快感を煽る。扇動するかのように言葉を漏らす。策を講じるから。


「クソ、あのガキは人種の癖に生意気な」と、若い漢戦士達の中から不満が漏れればね。


「俺の女房やガキを略奪しやがったあのチビへの恨みは一生忘れねぇからな」

「俺は彼女をあのチビに盗られたから悔しい。歯痒い」

「ああ、俺もお前達と一緒で長年連れ添った妻を寝取られてしまった。しまったよ。だから悔しい。悔しいぞ」

「俺もだぁ。好きだった女があのチビのものになってしまったよ」

「ううっ、酋長が……」

「アイカ様が……」

「俺の女神様がとうとうあのクソガキの物になってしまった」

「俺はシルフィー様一筋だったのに……」と嘆けば。


「お前はシルフィー一筋だったのか……。俺は長一筋だったのに……」と、他の誰かがつられるようにまた嘆き始める。


「俺はいつも凛としている様子のエリエの事が好きだった」

「儂はプラウムだ。あのシルフィー譲りの美しさ、麗しさが堪らん……」

「俺はあの勝気なサラだ。サラの事が好きだった」

「俺は今サラと喧嘩をしている気の強いウルハの事が幼い頃から好きで。俺の憧れだったのに……」



(お願い)


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