第15話 最弱男王の異世界ライフの始まり(1)
「起きて! 起きて! 起きてよ! アイカさん!」と、少年健太の声が朝早くから自分達の暮らす神殿造りの屋敷の中から元気よく聞こえてくるとても涼やかな気持ちの良い朝のようだねと、説明をしたところでみなは、『あれ?』と、思ったに違いない。違わないと思ったはずだ。
だって健太は他界、あの世、冥府へと旅立ったところで、彼の異世界ファンタジーなライフと冒険は終焉を迎え、終わったのではないのか? と、みなは思っているはず。はずだからね。
『あれ?』、『可笑しい?』、『何故、彼が?』、『少年健太が生きている。生存をしているのだ?』と、みなは思う。思うに違いない。
う~ん、実はね、女王アイカの怒り。逆鱗に触れ。自身の喉元を数か所も噛み、食い千切られた健太──出血多量で虫の息、死にかけ。他界、冥府へと誘われる寸前だった健太に対して治癒、回復魔法をね。末の妹であるサラの泣きながらの嘆願……。
自分達の異世界からやってきた可愛い婿殿、少年健太に対してこれ以上酷いこと、荒々しいことを夫、主、男王にしないでくれとの、サラ……だけではないね。次女のエリエや三女のプラウムを含めた。女王アイカの妹君達の必死の命乞い。嘆願を聴き、聞いて女王アイカはハッと、我に返り。虫の息で「ひぃ、ひぃ」と声にならない声音で息遣いをしている自身の夫でもある健太──床に転がる彼に止めを刺すことをしないで。
「プラウム悪い。悪いのだが。健太のこと。男王の傷をプラウムの治癒魔法で傷を癒し。治してくれぬか。本当に悪いのだが」と、女王アイカが自身の頭を深々と下げ。やはり末の妹であるサラのように、自身の美しい碧眼の瞳を濡らすオークとエルフのハーフである次女のプラウムへと嘆願をする。したのだよ。
だからプラウムは、己の碧眼の瞳を涙で宝石のように輝かせる行為をやめて頷き。慌てて自身の婿殿でもある健太の首の噛み傷、肉片が千切れなくなっている。紛失している箇所に己の華奢な掌を当て──。
「ヒール」と、言葉を漏らし。願を込め。
(健太さんの傷口よ。早く治って、お願い。お願いだから)と。
この集落のエルフの巫女、シャーマンの血を引く彼女が脳裏で、自身の主、健太の傷を早く癒し治したい。命を救い助けたいと思えば。
あらあら不思議……。
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