第18話 ホントの私も変わらないと
私に彼氏が出来てもショウはいいんだよな。
私が好きだからこの距離にいるだなんて、ショウはちっとも考えてなくて、でもそう思ってないからこそ近い距離にいてくれるのに甘んじたのは私なんだけど。
やっぱ、男ができても気にしませんって好きな男に言われるのって辛……っい。
「おい、下手糞」
ふざけてショウが私の肩にドンっとぶつかってくる。
「そっちだってまた変なところに罠置くからじゃん」
ドンっとぶつかり返す。
くそっと見上げた顔が近くて、愛しくて。
私の手が伸びる、愛しい彼のその温かな頬に触れて、ビクッとショウが振り返って私は一瞬でヤバイとふわふわとした世界から現実世界に戻った。
やばい最近ユウで会ってるせいだ。
油断してたうっかりしてしまった。
「やばい、間違えた」
もう口から出てきた言い訳がひどすぎるけれど、いいわけとして言ってしまったもんだから、それをつきとおすしかない。
今までこんな間違いしたことない、いつもどれだけ触れたくても踏みとどまってきたのだ。
「どんな間違いだよ」
「彼氏作ろう、ガチで……帰るわ」
狩りも終了してなかったけど、私は慌てて荷物をもって、逃げるようにショウの家を後にした。
せっかく仲直りしたっていうのに何やってんだよ私。
ビクッとして驚いた顔で振り返ってきたショウの顔を思い出して、思わずしゃがみこんでしまった。
本物の私とショウの付き合いは今後も続くというのに、なんてミスをやらかしたんだろう。
線引きがあいまいになってるヤバいヤバいヤバい、もっと友達らしくいないと。
そして、ショウのことを諦めるためにも動かないと。
次の日、私は鏡の前で悩んでいた。
ベリーショートだった髪は、度重なる浪費のせいで維持するために美容室に通えなくなってて、ショートカットくらいまで伸びてしまっていた。
前髪もいつの間にか、伸びてて、サイドに流すようになっていた。
眉は整えられてるけれど、化粧はしないし日焼け止めだけ。
動きやすいジャージかデニムにTシャツそれが今の本当の私。
ショウの友達としてしか、ずっと隣に入れない私。
私はため息を一つついて、クローゼットを漁る。
いきなり大好きなフリフリやふんわりしたのは無理だ。
でも、少しずつこっちでも女の子になっていこう。
じゃないと恋愛ができないし、ということはいつまでもショウから離れられない。
無理して続ける友達から、無理しない友達に代わるのだ、そして他の人をみて他の人を好きになって付き合おう。
私はその日初めて本物の私として少し女らしい恰好をしてみた。
幸い夏休みで友達と毎日会うわけじゃないし、だからこそ少しずつ変えていこう。
女の子らしい本物の私の外出は緊張した。
でも、思ったよりなんてことなかった、誰かに何を言われるわけでもない。
私の些細な変化など誰も取るに足らなかったことだったのだ。
確かに、高校入学のタイミングで中学生の頃から一気に垢ぬけた女の子増えていたし、第三者からみると私もその中の一人になっただけだ。
高校生になったから色気ずいた女子生徒の一人に。
そりゃ、ウソの私になるほどの激変だったら何か言われたかもしれないけれど。
ガッツリ詐欺メイクに慣れてしまっているせいで、ぼーっとしているとツイツイ顔を盛ってしまうから気をつけないとだけど、私らしい要素を残しておしゃれするのはそれはそれで楽しい。
家族にもいじられるかなと思ったけれど、女子高生になった私がようやくファッションやおしゃれに目覚めたのか程度で正直拍子抜けした。
むしろ年頃の娘がジャージにTシャツでいることのほうが心配だったみたい。
リサ姉には真っ先に会いに行った。
リサ姉は笑ったりしなかったし、むしろちょっとボーイッシュな女の子に似合う系統の服も買いに行かないとねと笑った。
私はなんか、心につっかえていたことが少し取れた気がした。
この顔の雰囲気や名残を残しつつ、ちょっとだけよくなって見える高等テクの顔の練習しようぜということになって、私は詐欺メイク以外にも、こっちの顔でのメイクも研究し始めた。
本物のほうでも、ファンデーションとビューラーとアイラインを引くようになってからは化粧用品をコソコソ隠すのも止めた。
服も一部は堂々と部屋に置いておくことにした。
自分で言うのもアレだけど、ウソの私のせいでおしゃれのレベルは上がってたんだと思う、化粧のレベルはすでに神クラスだったけど。
ほんの少しだけ、本物の容姿に手を加えただけで私は一気に垢ぬけた。
それでも、ショウと会う時は、またTシャツとジャージ姿だから、まだまだ吹っ切れてないところもあるんだけれど。
本物の私としては大きな一歩を踏み出した。
おしゃれはもともと好きだった。だから、普段からするのも全然苦じゃなかった、化粧品の減りが早くなったことは困ったけど。
化粧にたいして、親はようやく身だしなみを整えたことを好意的にとらえたようで化粧水くらい買いなさいよと少しお小遣いもあげてくれた。
近所の本屋に行くにも、ミュールを履いて、耳には目立ちにくいイヤリングをつけて薄化粧して外に出れるようになっていた、髪が短いからこそ、Tシャツとショートパンツにするだけでコーディネートとしてまとまるし。
新刊買えたとホクホクの帰り道だった。
それにしても暑い、今年の猛暑ヤバい。
そんな風に、少しずつ辺りをうろうろするようになった時だ。
ユウのほうにショウからラインが来たのだ。
『家が近所の幼馴染の女の子がいてさ……そいつのこと紹介してほしいって男友達から言われたんだけどどうしたらいいと思う?』
ラインをみて私は固まった。
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