第15話 ウソの私はホントの君とキスをした

 後は自然な流れだったのだと思う。

 調子に乗ってギュっと胸に顔を押し付けた私は苦しくなった。

 だから、ショウからホンの少しだけ離れてショウを見上げたのだ。

 ゆっくりと彼の顔が近くなって、いろいろ考える暇などなく、あっ今目を閉じるんだと理解した私は目を閉じた。

 唇にホンの少しだけ触れて離れたのがわかる。



 唇が離れて私は目を開けた。

 私を見下ろすショウは凄く穏やかな顔をしていた。




 その後はひたすらゲームをしたのだと思う。無駄に手も沢山繋いだ気がする。ようは、あの後部屋で何したかふわふわとした気持ちでよく覚えていない。

 ただ、すごく帰るのがさびしかったのだけはよく覚えている。




 隣の駅に行って、変装をといて家までの距離をいろんなことを考えながら歩くことにした。

 ずっと好きで一生隣で友達のフリをしているのだと思ってた。

 あんなに近くにいたのいつぶりだっただろう。

 じゃれあって抱きつけるのは、小学校低学年くらいまでだった。

 背はいつの間にか私よりもかなり高くなっていて、体つきも女の子とは全然違った。

 そんなことより、ショウのヒロインにはなれっこないから、友達でいるとおかしな方向にこじらせていた私が――彼とキス出来る日がくるとは思わなかった。



 それと同時に、さすがに、もうこれ以上は駄目だと思う。

 まっすぐ家に帰らず、私は子供の時よく遊んだ近所の公園へとやってきた。

 熱中症が騒がれるほど猛暑の昨今、いくら日が陰ってきたといっても公園には誰もいなかった。

 これ幸いとブランコに座ってゆらゆらと揺れながらぼんやりと考える。



 もう十分、いい思いはした。

 これ以上はウソの私がホントの君と経験してはいけないことなのだ。

 なにより、私が勘違いしてしまう。

 私は本来ショウのヒロインにはなれないんだもん。

 ショウと恋愛ができるような可愛い女の子じゃない。

 近所をジャージで出歩いちゃうような、思いっきり女捨ててるのがホントの私の姿なのだから。



 さて、ショウになんていって本来ならありえなかったイレギュラーな展開に終止符を打つべきか。

 ぼんやりとそんなことを考えていると頬に冷たいものがあてられた。

「ひょあぁあ!?」

 全然可愛くない反応だ私。

 それはジュースだった。

 こんなこと私にする奴はたった一人。



「お前、スマホあえて無視してただろ。そんで、今日の気温知ってるか? 夕方といえ熱中症になるぞ」

 ムッとした顔でジュース片手に立っていたのはショウだった。

「ゴチー」

 そういって、ショウから素早く飲み物を拝借して一気に飲む、どうやら喉が渇いてたみたい。考えごとのし過ぎて、のどの渇きとか全然わからなかった。



 私が、のどを潤していると、ショウは隣で膝を少し曲げて立ってブランコをこぎ出した。

 あぁ、ちゃんと立ったら頭がぶるかるほど大きい。もうあの頃と全然違うんだね。

 でも、私がこうなっているとき何か聞いてこず、私が話しだすのを待ってくれるのは代わってない。



 どれだけの時間がたったんだろう。もらったジュースの残りがぬるくなるくらいは此処にいる。

 今言ってしまえばいい。そうすれば楽になれる。

 意を決してショウをみた。

 あのさと話しかけようとした時だ。ショウのほうがとうとう話し出してしまった。



「お前もさ、彼氏作ったらいいと思う」

 ショウから出た言葉は喧嘩売ってんのか? という内容だ。

「自分が彼女できたからって、いない私に喧嘩売ってる?」

「そうじゃない。きっとこういう時、俺じゃなくて彼氏がいたらこんなところで座ってないで電話の一本でもしたら解決できたんじゃないかなって思ったんだよ」

 ショウはやっぱり優しかった。

「よけいなお世話です。最近調子乗ってますよね……」


「えっ、ちょっ。なんで敬語」

「地雷踏み抜いたんで、話しかけないでもらえますか?」

 私はいつも通り冗談めかしてから家に帰った。

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