第14話 ウソの私に君はハグをした
ショウによって、私の水着は再びタオルケットに覆われ隠された。
私の胸元をしまうかのようにショウがギュッとタオルケットをいまだに握っているままだ。
別にタオルケットで中身を見えなくしてくれることはいい。ただ、問題はそこではない。タオルケット越しに手があたっている胸に。
しかし、ショウは違うことでキャパを超えてしまったのかその状態のまま固まって動かない。
しかし、タオルケット越しとはいえ、手が胸にあたっているこっちはそれどころではない。
これは、言ってもいいの? 胸に手があたってるって……
言わない場合は、私はいつまでこのまま耐えればいいのか。
よし、言おう。
私は意を決した。
「ショウ君、あの……ね」
私が呼びかけるとこちらの世界にショウは戻ってきたようだ。
「ごめん、何?」
「手の位置をかえるか、どかしてもらってもいいかな?」
ショウは『えっ』という顔になった後、手を動かそうとしたせいなのか私の胸に手を押し付ける形になったせいで、ムニっとなる。
「あっ」
私の口から驚きから声が漏れた。
彼は慌てたのだと思う、タオルケットを握ったままショウが自分の手を私の胸からはなすために両方の手を広げたポーズになった。
そのため、タオルケットで覆われていたのが、こんな至近距離ですべてさらけ出してしまった。
両手を大きく広げてくれたせいで、肩に引っかかっていたタオルケットすら、ずり落ちてしまった。
私に今何が起こったの? でも、面積が少なく下着との違いがわからないような状態でショウの目の前にいることだけは理解した。
私は恥ずかしさで顔だけでなく身体も暑くなる。
どうしたらいいのと思うけれど、動けない。そんな私はショウが男性として反応してることに気がついてしまった。
そりゃこんな恰好で目の前にいるのだ、生理現象はしかたないのだと思う。
慌てて眼をそらした。
「ごめん」
短くそう言われて、ショウは部屋から出て行ってしまった。
私はタオルケットに再びくるまってみるが、もうこの恰好は恥ずかしいという気持ちが勝った。
水着を見せるという約束は一応守ったのだ。
タオルケットの中に着替えをいれて、手早く水着から服に着替えた。
男性だから、興奮したらそうなるのだろうけれど……恥ずかしい私はまたしても服を着たのにタオルケットにくるまった。
このタオルケット……ショウの匂いするんだよ馬鹿と思いながら。
それにしても戻ってこない。
いや、これは知識的に賢者モードとやらに入るために……ってこれ以上考えるのはよそう。
もしかしたら、私のいろいろをみたことや、逆に私に見られてしまったことで戻りずらいのかもしれない。
そう考えた私はショウを探したほうがいいのかなと思っていると、扉がノックされた。
「ショウ君?」
「はいってもいいですか?」
「どうぞ、ここショウ君の部屋だよ」
私は勤めて明るくふるまった。恥をかかせるわけにはいくまいと思ったから。
ゆっくりと扉が開いて、申し訳なさそうな顔でショウは入ってきた。
あんなものを見てしまったせいで、見てはいけない場所が気になり私はタオルケットを深くかぶった。
深呼吸をしてから顔を出す。
「えっとね……見たい?」
中はもう服を着ている、でもあえてそう言う。
少し間を置いてショウはゆっくりとうなずいた。
入口に立つショウのところまでもったいつけるかのようにゆっくりと歩く。
前開きでじゃーんとやって見せた。
しばらくすると、もう水着ではないことに気がついたようで『からかったな』という見慣れた表情をした。
「恥ずかしいから着ちゃった。この服は似合う?」
場の空気を和ますの大成功と私は得意げにニヤリと笑った。
「身構えて損した……。でも似合う」
悔しそうにショウは笑ったあと、私の服装をさらりと褒めた。
服装など褒められ慣れない私はそれがとても恥ずかしかった。
「ははは……ありがと」
褒められ慣れない私は乾いた笑いと慣れないお礼を言った。
「ぎゅってしてもいい?」
えっ、そういうの聞いてからするの? 聞かれるとものすごく恥ずかしい。言わずにやられたらやられたらで、びっくりすんだろうけど。
そして、断る理由がない私はそれにうなづいた。
私の背中と腰にぎこちなく手がまわる。
近い、いや……ハグされるのだから近くて当然なんだけれど。
私からも何かアクションを起こしたほうがいいのだろうかと、おずおずと手をショウの背中にまわしてみた。
水着姿を見られた時、あんなにドキドキすることはもうないかもと思ったけれど、すでに同じくらいドキドキしている。
背中と腰にぎこちなく添えられている彼の手の存在感が凄い。
胸元に顔をうずめる形となってしまったけれど、Tシャツって薄いよ。ショウのぬくもりがダイレクトじゃん。
顔を見られたくないのと、こんなチャンスもうないとショウの胸に顔を埋めぎゅっと抱きついた。
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