第126話 我が主の背へ

 舞いながら、影分身を操って。

 鈴の音が強く響いていく。

 もうちょっと、もう少し!

 手を伸ばしたら届きそうな距離を踊る。

 異世界に戻る為、おのれあるじの元へ。

 もう出来る、もう完成!

 足元から這い上がるこの感情を押し留めて。

 呑み込んで、帰らせて。

 忍の主の元へ。

 ねぇ、これ以上は限界を超えて行く。

 尽きちゃった、尽きそうだ、この身体が音をきしませる。

 乱反射らんはんしゃして飛んでいけ。

 魂だけその手を握って。

 もう見える、もう其処そこに!

 入り込んだが最後。

 起き上がるだけ!!











「墨幸様!!」

 手を伸ばしてそう叫んだ。

 視界が広がる。

 この手にはあの手がない。

 気配が煩い。

 直ぐに止める声も聞かずして走り込んだ。

 その背中を守らせて!

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