第123話 夜の隙に誓う
ビャクが寝たのを確認して、部屋に行く。
「
「どったの?」
「手を出せ。」
首を傾げながらすっと差し出す手を掴み、薬指を確認する。
「傷はないな。」
「うん?」
その指に噛み付いた。
薬指の根元近くを強く噛んだ。
「いぃっ!?痛い!
手を引いて抵抗するのを無視して噛み続ける。
口を離せばくっきりと真っ赤な傷が残っている。
手をばっと引いて涙目で傷を見る。
「ちょっと!ねぇ!見てこれ!!血ぃ出てんだけど!!これ傷消えないよ!?」
しゃーっと怒る夜影に今度はワシの手を差し出す。
「噛め。同じ傷付けろ。」
「はぁ!?」
「噛め。」
夜影はワシの手と目を交互に見つめる。
「何?これ、何!?」
「あぁ…説明が先か?」
「当たり前!」
夜影に話を全て話す。
すると顔を真っ赤にさせて、上目遣いでワシの差し出す手を両手でそっと掴んだ。
「一気にいくよ。」
「あぁ。」
がぶっと噛んだ。
一瞬の強い痛みが駆け抜けた。
口を離せば血がつたって流れた。
真っ赤な傷がくっきりとついている。
これもまた、消えないだろう。
「知らせず噛まそうとしてたでしょ、最初。」
「だが、知らずは噛まなかったな。」
「そーいうとこどうなの本当。」
と、文句言いながらもぎゅっと大切そうに胸に当てている。
「でも…大切にする。大切にするよ、絶対。」
そんな声は聞いたことがない。
何と表現しようか。
息が止まりそうだった。
「でも、良かったの?指輪なら捨てられるのに。これ、本当に消えないよ?」
「捨てられるから指輪にしなかったんだ。その程度の覚悟で誓えるか。その程度の誓いなら最初から要らない。」
うっとりとその傷の指輪を眺めていた夜影は一瞬驚いた顔をしたが、幸せそうに笑った。
「えへへ、格好良い♡そーいうとこ大好き♡」
今度はワシにぎゅっと抱きついてきた。
夜影を受けとめて抱き締め返す。
自分でも顔が熱いことに気付く。
多分、同じくらい赤くなってるんだろうな。
頭を撫でている内にいつの間にか静かな寝息が聞こえてきた。
寝た…のか?
布団に寝かせて、見下ろす。
…少しくらいいいだろうか。
どうせ寝ている。
少しくらいなら。
我に帰った時には、夜影の首には赤い点が出来ていた。
つい、接吻じゃ済ませられなかった。
気付いたら怒るだろうか。
でもまぁ、夜影はいつも首は隠している、
取り敢えずは満足だ。
最後、夜影をひと撫でしてから部屋を出た。
今夜は寝れそうにないな。
良い意味で
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