第122話 指の傷と
「
「なんだろうな。」
防具を着けながら、答える気はないらしい。
「噛まれたんですか?」
「いや…。」
それだけは否定した。
噛まれたんじゃなかったら自分で噛んだ以外はない。
けどだったらなんでそんなとこを自分で噛む?
そこだけ否定したってことは、ひっくり返してそういうことだったり?
じゃぁ…なんで?
「師匠。」
「なぁに。」
「師匠にも同じとこに噛み傷ありますよね。」
「え?あー。」
自分で手を見る。
「あるねぇ。」
「今気付いたんですか?」
「いや、別に。どの傷のこと言ってんのかなぁって。」
「じゃ、なんですかそれ。噛まれたんですか?」
「うん、まぁ…噛まれた、ねぇ。」
微妙な反応をしながらそう答えた。
師匠と同じ傷、同じ薬指。
噛まれたって師匠は答えたし、才造さんも実はそうなんじゃないか?
「才造さんもじゃないんですか?」
そう問うと、溜め息をついた。
「違う。噛まれたんじゃない。噛ませたんだ。」
「それって…誰に?」
「こんなとこ噛ませる相手は一人しかいない。」
「まったく、困った旦那さんだよねぇ。」
「っ!」
あ、才造さんの顔真っ赤になった。
ってことは、才造さんは師匠に薬指を噛ませて…じゃぁ、
「師匠、噛んだのって才造さんですか?」
「ふふっ、他に誰がいんのさ。」
心底幸せそうに笑うもんだから、もうその傷の意味も一つだろうと確信する。
「話、聞きたい?」
「…遠慮します。」
「言うと思った。どうせ意味わかったんでしょ?」
「俺が教えたからそりゃぁ…。」
「道理で、忍に無い話を知ってると思ったら。」
才造さんは尻尾を弄りながらそっぽを向いた。
教えたのは俺だけど、やるのは普通指輪じゃねぇのか……?
なんで噛んだんだよ…。
「で、いつの間に?」
「夜だけど?」
「夜…なら、それ以外のこともしてそう。才造さんですし。」
「なんでそうなる。」
「それ以外って?」
「あー、何もなかったんですか。」
「寝やがったからな。
「お預けくらい過ぎじゃないですか?」
「まぁた二人でこそこそ話しだす。なんなの。」
むぅーと、床を尻尾でぱしぱし叩く。
イライラしてる?
「いや、我慢が効かなかったから寝てる間に接吻はした。」
「狼怖っ!」
「食いはせんが、つい…やらかしたかもしれん。本人まだ気付いてないが。」
「何やったんですか?」
「さぁな。そろそろ構ってやらんと拗ねる。」
才造さんはサッと師匠の方へ行った。
何やったんだろ…?
やらかした、ってことはバレたらヤバイかもしれないってこと?
師匠を観察しても全然変わりない。
見えるモノとかじゃないのか?
どうなんだろう。
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