第111話 我を呼ぶ

カゲ……か?」

 その声が聞こえた瞬間、目を見開く。

夜影ヨカゲだよな?」

「ビャク様!?何故このような所へ?」

「探してたんだ…ずっと…今まで何処に?」

 声が出ない。

 カラスの声を無視して問われるその言葉に、ただ頭を下げた。

「カラスに…なろうとしてたのか?」

 そういいながら、近付いてくる。

 やっと、声が解放された途端あったことを全部吐き出した。

 死んでから、ここまでの話を。

 すると、突然ぎゅっとこちとらを抱き締める。

「良かった…。死んだのは良くないけど会えて良かった…。」

「申し訳…ありません…。」

「ということは…今11なんだよな?」

「あ、はい…。そうですね」

「…術とか使ってる?」

「まぁ…はい、そうですね。」

「解け。見たい。」

 気が抜ける。

 こういうのは感動の再会的なモンじゃないのか。

 解いてみればやっぱりガキになる。

「夜影がちっちぇよぉ…。」

「そりゃガキですからね。」

「色々とちっちゃくなってる…。あ、でも、これはこの年では大きい方か?」

「ドコの話してんですか。ビンタでもくらいたいんですかね?」

 何年ぶりの会話だろうか。

 とてもくだらない会話も。

「ちょっと二人きりにしてくれるか?」

「は、はい…。」

 カラスを退かせてこの部屋に二人きりになる。

 さっさとカラス風忍装束等を装備しなおす。

「おぉ、そんな感じなのか。」

「体が元のサイズに戻ればまたあの装束を着るつもりですがね。」

「お前が居ない間、竜たちも寂しがってた、らしいぞ。」

「へぇ、そーなんですか。にしても、あんたおっきくなったねぇ。」

「そうか?」

「うん。なったなった。ま、十何年も経ちゃぁそうじゃないと可笑しいんだけどね。」

「いきなりタメ口になるんだな。」

「おいや?」

「そうじゃないけどタメ口って久しぶりだなぁって思って。」

「そうだねぇ。ん、そっか、あんたもう大人か。成人おめでとさん。」

「え、あ、そうだな。もう俺は大人だな。もうガキって言えねぇだろ?」

「言う方がガキになっちまってんだもんねぇ。言うときゃ言うけどさ。」

 そんな雑談をする。

 逆転した歳でも言うことは変わらない。

 中身がそのまんまだからだ。

 忍風情しのびふぜいがこんな口のきき方しちゃいけないんだけどね。

 風が吹いた気がした。

 何かが聞こえてくる。

 耳をすませて探した。

「夜影?」

(何処だ。)

「どうしたんだ?」

(何処にいる。)

 聞こえる声が重なる。

 待って、何処から?

虎太コタ…?」

 風が唸り声をあげた

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