第109話 昔々
妹を探してやっと見つけて再会したというのに、また離れた。
敵討ちなんてものは好まない。
アイツだって、ただ怖かっただけなんだろう。
お互いに、一度叶えば二度は望まないたちだ。
これ以上はない。
死体を置いて風任せに走り抜ける。
酷く頭が痛いような気がしたが、今更影の中へは戻れなかった。
アイツが影を好んでしまうのは陰が強いからだろう。
逆に好めず
では何故影の中へ入れたのか。
わからない。
それが答えだ。
その先なんてものはない。
モノには限界というものがあると言うが、望めば無限だということに気付くだろう。
延々と続くそれに飽いたか諦めたか、もしくは満足したその時点が限界と言われ、アイツのように追っていく者は限界なんて知らないし、無限を挑み続ける。
考えてもわからない、答えが出ないというのはそれからも言える場合もあるが、答えと認めない場合、同じ範囲の中で延々と回る場合、様々だ。
無理矢理にでもそれを答えとしたならば、それで終わりであり限界である。
いつの間にか一つ、小さな村についた。
村は人が少なく、活発というわけでもない。
滅びの一途を歩く村か、これから発展の存続なのか。
「このお国のお話をしようね。」
そんな声がした。
「このお国が出来る前はこの村のように小さな小さな村があったんだよ。村には神様がいて、片方は人間に化けて暮らしていた。もう片方はひっそりと隠れて暮らしていた。ある日、片方の神様はある人間と出会った。化けるのが得意な神様はその人間にバレないようにしていたの。しばらく一緒に遊んでいたら仲良くなった。」
なんだ…古びた話か。
何処かで…聞いたか?
「そんな二人にカラスが静かに飛び込んできた。カラスは人間を悪い人だと言って殺そうとした。神様は怒って人間を守ろうとした。カラスを沢山殺して暴れた。暴れている内に神様は悪い影に飲み込まれて心を無くしてしまったの。もう、人間の声は届かなくなって神様はカラスだけじゃなく、村を壊そうとした。
そんな神様にもう片方の神様が現れた。今まで隠れていた神様は影に飲み込まれた神様を助けようと影を吸い込んだの。」
影…?
「けれどその影はとっても強かった。神様は吸い込みきれなくなって一緒に影のなかに入ってしまった。人間はどうすることもできなくてただただ困った。後からきた片方の神様は人間に封印する力を最後に与えた。『これで封印してくれ』と人間に頼んだの。人間は迷いに悩んでその末に…。」
その先を聞かずともわかった。
その場から離れる。
(その末に、人間は神様をその力で封印することに決めた。)
そうだろう?
そうなんだろう?
風が音を立てて吸い込まれていく。
そうだ、そうなんだ。
封印された神様とやらは、何処にとまで問う必要はない。
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