第105話 鳥籠で待つ

「おい…どういうことだ。」

「あーらら、盗み聞きとは。」

「うるせぇ。まさか本当に忍だったとはな。」

「似てるってだけでさっさと処理しないあんたらも優しいこって。」

 ミヤビと他のカラスが睨み合う。

 待ってくれ、オレは…オレはどうすればいい?

 このままだとミヤビが殺される。

「でもまぁ、あんたらにイジメられて良かったわ。そのお陰で色々と得られたし。」

「なんだと?」

「どーお?10年前の忍に会えたご感想は?」

「…かっけぇ…。」

「あら正直。嫌いじゃなかったの?」

「嫌いだが、正直会ってみたかったんだ!どんな奴か知らねぇからな。」

「良かったじゃん。会えて。ってか、結構カラスって正直なのね。こちとらビックリだわ。」

「それに、お前の素顔は初めてみた。」

「あ、やっば。さっき風呂はいったから全部落としたし脱いだんだった。」

 目から下を片手で覆ってそう呟いた。

 オレには良いくせに他のカラスにはダメだったのか?

「なによ。そんな見て。」

「いや…。」

「殺すなら殺せば?言っとくけど血には毒あるから触んないようにね。」

「なんで忠告するんだよ。」

「なんでって、こちとらの毒は笑い事になんないからに決まってんでしょうが。」

「本当に忍なのか?」

「嘘だろうがまことだろうが忍なら手は打つけどね。カラスのそういうとこ甘いと思うなぁ。」

 からすのくちばしを模したそれを持つと撫でる。

 服だって、休む時の服装になってる。

 そんな気の抜けた様子で、殺してもいいなんて笑まれても…。

「どうせビャク様のとこ戻んなきゃいけないんだ。また転生してでも行くさ。」

「国王様の所へ?なんで?」

「ビャク様の忍だったんでね。調べた結果、まだやってるっていうし、まだこちとらを探してるっていうんだ。行かなきゃダメでしょ。」

 ニッと歯を見せ笑うそれは嬉しげだった。

 国王様の忍…?

 なら今殺せば今度はこっちが大事おおごとなんじゃないか?

「なんでそれがわかってすぐ行かなかった?」

「行けるわけないでしょーが。少なくともあと9年は待たないと。」

 怠そうにそう言いながら、腰を降ろす。

 つまり20…大人になるまではここを出られないということか。

 だから待ってる…。

「忍なら認められさえすればいつでも出られるってのに。ホントここは鳥籠だね。」

 退屈だと言わんばかりにそう吐き出すと、今直ぐにでも行きたいという目をする。

 鳥籠…か…。

 確かにそうなのかもしれない。

 カラスは所詮しょせん、鳥籠の中で飼われる道具なんだと思わされる。

 そう考えれば忍はどこまで自由なのだろうか。

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