第103話 忍が如く

 縄も猿轡さるぐつわも解く。

 死ぬ前に影に防具とかは影に沈めては置いたけど…。

 影に手を突っ込んで探ると、確かに残っている。

 ま、この身体じゃまだ使えないけどさ。

 影に入れて置いた薬を歯に仕込んで、髪に針を隠しこむ。

 忍らしくは勝手にさせて貰いますよっと。

 武器もあるし、全部残ってる。

 慣れたモノよ。

 転生するたびにこんなことしてたんだから、さ。

 倉庫から脱出も出来ないことはない。

 むしろ余裕なんだけど、出ずに一週間このままってのも悪かない。

 子供の身体といえど、耐えられないということはないのは知っている。

 闇属性で、能力も変わらず。

 いっそ能力だけ変わってくれてもいいんだけど。

 倉庫に置いてある物を見ておこう。

「おっとっと、これは…。」

 死体…?

 死んで時間が少々経ってる。

 だから異臭がしたのか。

 こりゃ、餓死だね。

 ということは、こちとらみたいに放り込まれた奴はいるってことか。

 他にはいるようには思えない。

 最悪、この死体を食ってしまうのも生きる手ではある。

 死体食いは、異臭が放つ前がいいんだけど、この際不味くてもいい。

 それから一週間経った。

 倉庫の扉は開かれず、あの3人は現れず。

 さぁて、おのれから出てみるのも…。

 がらっと扉が開いて外の光が刺し込まれた。

 眩しさに目を細める

「ここにいたのか。」

「あ…えっと…。」

「どうせ無理矢理放り込まれたんだろ。にしても…生きてるとはな。」

 一週間じゃ死ねません。

 いや、マジで。

 結局死体は食べなかったし。

「縄はどうやって解いた?」

「爪で。」

「教えられたか?」

「いえ、元から。」

 険しい顔をした。

 そりゃそうだ。

 だってこーんなガキが既にあれこれ知ってて、一週間飲まず食わずの暗い中で生きてるわけがない。

 長い間こんな暗い中に閉じ込められれば普通は気が可笑しくなったりして自殺する奴もいれば、一週間何も口にしないせいで餓死する奴もいる。

「お前には、少し上のことを教えるべきだな。」

 出ましたよこの言葉!

 懐かしいねぇ!

 言われたことあるわぁ、ってかよくあるやつだね!

 それから数年…立派にカラスやってます。

 忍がカラスやってると、どうも並みじゃ収まんないから特別扱いで。

「あーらら、あんたどったの?最近いっつもそればっかりだね。身体持たないんじゃない?」

「え、あー、節約してるだけだ…。」

「大変だねぇ、はい、これ。」

「え?」

 さつを一枚目の前に置けば驚いた顔をする。

 コイツの事情は知ってる。

 だから無理ばっかさせるのはダメってね。

「これで今日だけでもお腹いっぱいは食べれるでしょ。無理しなさんな。」

 そういうと泣きそうな顔で受け取った。

「ありがとうございます!!!ミヤビ先輩!!!」

「そんかし、他の奴らにはナイショね?」

「はい!!」

 ったく、コイツも大変な嫁さん持ったねぇ。

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