第101話 笑い死ぬ
「気分はどうだ?」
「久しゅうこった。こういうの、いつぶりかねぇ。」
「余裕ってことか。」
既に傷だらけの身体に、傷を足していく。
それでも
笑みながらまるで他人事のように眺めている。
「まさか殺しておいて罪を償わずに生きているとはな。」
「だから殺すって?」
「いや、殺しはしないがな。」
「あは、そんならひたすら耐えりゃいい話だね。」
「余裕ぶってられるのも今の内だろうな。」
「それはどうだか?こちとらは忍だぜ?舐めてもらっちゃ困るっての。」
ケラケラと笑うそれは完全にカラスを舐め、馬鹿にしている。
この忍が笑狂いだとわかったのは、それから
死ぬ寸前だろうところまで痛め付けた。
身体を伏せながらでも笑う。
痛めつければ痛めつけるほどにより一層楽しそうに笑う。
「どうなってやがんだ…。」
「言ったデショ?忍だってネ。ナメちゃいけない。」
確か喉も潰した筈だ。
なんでまだ喋れる。
舌を掴んで睨み付ける。
忍は口角をこれでもかと上げ、カラスを瞳孔をかっぴらいた目で見つめる。
「やめとけ!これ以上は死ぬかもしれねぇ!」
「忍だからな。死なねぇかもしれねぇ。」
「おい!」
どうしても腹が立つ。
わざとそういう振る舞いをしているのかもしれないが、仲間を殺されてこんな
グッと力を入れて引きちぎろうとした時、忍がカラスの手ごと噛んだ。
手を噛んだから、舌は噛んでない。
直ぐに手を離す。
クックックッと喉で笑うと、舌を出す。
「ホラ、引きちぎりたいんじゃないの?」
「コイツっ!!」
「大丈夫。あんたがやんなくても、
縛っていたはずの手で自分の舌を掴むとそのまま引きちぎった。
血が飛んで、カラスの腕にかかる。
今まで血がかからないようにしていたというのに。
血がそのカラスに痛みを与え、唸らせた。
またクックックと笑う。
「何がしたい?」
忍は答えなくなった。
そりゃそうだ。
舌がないんだから。
ただ、酷く楽しげに笑う。
その頭を踏み付けて、見下す。
目を閉じると笑んだままの口も閉じられた。
呼吸が静かになる。
まさか、死んだわけじゃ…?
心臓がある辺りに手を当てる
鼓動がまだ波うってはいる。
忍の体温が酷く低いような気がした。
自ら死にに走っているのかもしれない。
無理矢理口を開けさせても、呼吸はしなかった。
口には血が溢れかえり、それが呼吸の邪魔になっているせいだけではない。
本人がしないのだ。
死なれたら困る。
急いで治療を行わなければ…。
三日経った。
忍は死んだ。
治療は上手くいって助かると。
それでも忍は口の中に隠していた薬を飲み込んで死んだ。
その薬が元から自害する為の薬なのかはわからない。
だが、死にたかったなら最初からそうしてればよかったのに。
なんのつもりで…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます