第100話 本からカラスに

 城の中にある書物を全て読んだ。

 城下町中の本屋や図書館へ走り回り、ある本は全て読み尽くした。

 全て覚えて、整理し、要らない情報を頭の隅の方へ追いやる。

 依頼のことも調べなきゃいけない。

 本当のあるじの元へ戻る方法も知らなきゃいけない。

「くそっ!わかんない…。」

 床を殴り付けて、そう吐き捨てる。

 カラスを殺したお陰でカラスとは情報をやりとりなんざ出来るわけがない。

 まぁ、そもそもカラス程度を頼るつもりもないけどね。

 疲労がたまった身体に秘伝の薬の一つを溶かす。

 無理矢理にでも動かなければ…。

「何処か行くのか?」

「えぇ、情報収集とそれから、材料の調達に。」

「カラスの情報じゃ駄目なのか?それに、材料なら取り寄せられるだろう。」

「有難いんですけど、こればっかりは忍のこだわりもありますからね。情報も、忍のが優秀ですって。材料にいたれば利き目が必要なんで。」

 窓に足を掛けて、振り返る。

「そうか。そういう感じなんだな。」

「すいませんね。半端なモンは使えないんで。」

 そういってから窓から飛んだ。

 城下町から隣街にまで飛んでから、そこでも調べまくる。

「まぁ…こんなモンだよねぇ。」

 壁に背を預けて、深い溜め息を吐き出した。

 ポタポタと血が地面に落ちたのにやっと、鼻血が出たことに気付く。

 あの薬の副作用で鼻血が出る。

 身体に合わない場合だと、白目をむいて泡をふく。

「お前か。」

 その声に目を向けると、カラスが二人立っていた。

「あぁ、カラスさんね。お仕事ご苦労さん。何かご用で?」

「まさかわからんとでも言うのか?」

「ぁ…。」

 答える前に足の力が抜けて崩れる。

 低くなった視界でぼんやりと眺めながら、段々冷たくなっていくような感覚を味わう。

 限界…かな…。

「おいっ!?」

 腕を掴んで上へ立たせようと引っ張られるも、身体の力は完全に抜けて一切動けない。

 担ぎ上げられる。

「どうするつもりだ?」

「連れてく。どうせこのまま放置は出来ない。」

「何処に?」

「巣以外にないだろう?」

「馬鹿か!コイツはなぁっ!!」

「わかってる!連れてけば、好きに出来るだろ。死にさえしなければな。」

「…そういうことか。」

 会話が耳に入り込んでくる。

 脳内で延々と繰り返し情報を回す。

 そこでハッと気付いた。

 試してみるのも悪かない。

 一か八か…。

 ただ確信していることだ。

 どうせ身体が動かないなら、カラスに好きにさせてもっと弱ればいい。

 それなら、死にやすいんじゃなかろうか。

「最近本をしらみ潰しに読んでいってるからな。なにか探りを入れてるんだろう。」

「本で何を探るんだ。」

「歴史でも見れば何かしら得られる場合もあるからな。」

「鼻血が出るほど没頭するなら、本じゃないもんにして欲しいがな。」

 あぁいや、鼻血は薬の副作用…。

 つまりは仕事しろってことでしょ。

 それにしても、なんでいきなり身体が…?

 揺れるカラスに担がれたまま、カラスの巣へと連れられていく。

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