第95話 忍の首輪

 いくら師匠…いや、夜影ヨカゲが俺の忍になってくれたって言っても、心配だ。

 また、こう、からかうみたいに消えたり、あの男を殺しに行ったりしてたら困る。

「夜影。」

「はい、なんでしょうか?」

「ちょっと、じっとしといてくれ。」

 大人しく言われた通りにする夜影を見てるとなんか違和感がある。

 こんなに…すんなりと…言うことを聞くもんなのか?

 じい様に相談したら、「そういう者こそいい調べ方がある。自分の色をイメージした紐やリボンを用意するのじゃ。そして、それをその者の首に軽くつける。それだけでよい。」なんていってた。

 だから試しだ。

 夜影の細い首に、首がしまらない程度に軽く紐をつける。

 こうしたら、首輪みたいだな…。

「なんです?これは。」

 紐の先をつまんで首を傾げる。

 取ろうとはしないんだな。

「と、取るなよ。」

「あぁ…なるほど。首輪的な…言うと印ですか。」

「え、あ、みたいな?」

「やけに重いじゃぁないですか。」

 重い?

 ふんわりと笑うと首の紐に手をそっと添えた。

「わかりました。」

 じい様が言ってた紐に丁度いいのは、邪魔になるくらいの長さがいいってことだから、長めのにしたけど…。

 本当に邪魔そうだなぁ。

 それから一日城に夜影を留守番にさせて外で活動した。

 帰ったら多分邪魔だろうから外してたりして。

 そう思って帰ってみる。

「夜影!」

「ハイハイっと。お呼びでしょうか。」

 ……!

 外して…ない!

「外さなかったのか?」

「あんた様がそう言ったクセに?」

「あ、いや、だって、邪魔だっただろ?ってきり外してるかと。」

「邪魔でしたけどね。」

 あ、やっぱり邪魔だったのか。

 外してやろう。

 やっぱなんか可哀想…。

 紐をしゅるりと外せば名残惜しそうな顔を一瞬した。

 え?

 なんで、今、そんな顔…。

「嫌…だったか?」

「まさか。」

 そうカラカラと笑う。

 その日、じい様のところに報告にいった。

「で、どうなんだ?」

「うむ。その者はどうやら本当に外せなかったようじゃの。」

「どういうことだよ?」

「忠義に熱いということじゃ。自分では首輪を外せぬのだ。」

「外せるのに?」

「簡単に外せるモノでも外さぬということは、精神的には外したくないのが本音じゃの。」

「外したくない…って…。」

「名残惜しそうにしたんじゃろう?まさにそれじゃ。嬉しかったのかもな。首輪が。」

「え、そんなドMだったりすんの!?」

「道具じゃという者ほど、首輪をつけられあるじのモノと示されたりするのを好む者がおったり、それほど必要とされたいと思っておったりするわけじゃ。」

「つまり、独占されたいってこと?」

「うむ。大方おおかた、主が欲しかったんじゃろうて。」

 夜影に聞いたら答えてくれんのかな?

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