第94話 忍を飼う
「わかったから待て。この忍は殺すな!」
「何故です?」
「俺の恩人だ。殺してはいけない。」
「ですが、カラスを殺した罪は重いですぞ。」
「わかってる!けど。」
師匠をチラと見ればギロつく目で男の手元を凝視し、ギリギリと歯を噛んでいる。
まだ我慢している、ということ…か?
「罪を償わせなくてはなりません。ですから心臓を捧げさせる。それではなりませんか?」
「ダメだ!…罪の償わせ方は俺が決める。だから、手を出すな!」
「…国王様がそういうのであればそういたしましょう。」
心臓を俺の前に置くと、下がった。
頼むから師匠…コイツを殺さないでくれ…。
事が重大になる!
男が去ってやっと師匠はその恐ろしい様子を解除した。
「クソが。」
吐き捨てるようにそう呟く。
「そ、その…殺さないでくれたんだな。」
「事が重大になりゃあんたが危ういからね。あー、最悪。」
「で、えっと、さっき言っちまった罪の償い方のことだが…。」
「は?忍に罪がどうのってことがあると思ってるの?ん?」
うわぁ、怒ってるー!!
「いや、でも、」
「あ?なに?言ってみ?短く簡潔にハッキリと、ね。」
怖い怖い怖い!!
殺される!!
「どうしてもしなきゃなんなくてだな…そ、その、俺の忍になってくれ。それが、罪の償い方ってことで…えっと…。」
師匠が無言になった。
いや、俺、どうすりゃいいんだよ。
怖ぇよ。
死にたくねぇよー!!
「あんた、本気で言ってる?あんた、忍が扱えんの?」
「え…。」
「言っとくけど、カラスじゃないかんね?」
「わ、わかってる!」
「へぇ…ガキがついにはそういうこと言ってやがんだぁ…。」
「ちょ、酷くないか!?」
クックックッと喉で笑う。
あれ?機嫌が良くなった?
ついさっきまであんなに怒ってたのにか?
「ま、いいけどね。新しい
そう言うと膝をついて頭を下げた。
これって…あの…服従の証ってやつじゃないか?
あの服従のポーズだよな!?
嘘…師匠が俺にそんなことしてくれるってあるか!?
「し、師匠…。」
「ビャク様、師匠だなんて呼び方は道具に対して相応しくないでしょう?」
「う、じゃ、じゃぁ何て呼べばいいんだよ。」
「なんなりと。ビャク様がお呼びしたいようにお呼び下さいませ。」
あのからかうような口調や態度はどこへやら。
え、こんな感じなの!?
主の前だったらこんな…こんな…。
もう…なんていうか…感動…!
「
「ビャク様ってば、こちとらがこんなに畏まって雰囲気作ってるっていうのにそれですか。」
その服従の態勢のまま言われても…つか雰囲気作りだったのかよ!!
「もう、身も命も心も、ビャク様のモノですよ。ご安心下さい。」
その優しい声がそんなことをサラリと言う。
心臓がバクバクと激しく鼓動を響かせる。
だって、こんなこと言うとか…思わないし…。
身も心も…って…。
俺のモノって…。
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