第87話 これが最後
自己申告した方が怒らないよなぁ。
でも、これは無駄な傷だし…。
扉に手をかけて、開けようとした時嫌な匂いに気が付いた。
武器を忍ばせて勢いよく扉を開け放つ。
そこには
才造…?
なんで…今…。
近付いて傷に手を当てる。
息をしていない。
心臓が…ない…。
「誰だ。まだ、居るだろ。出て来な。」
気配が全く聞えない。
でも、居るってわかる。
ドス黒い感情が心を満たす。
影がざわつく。
周囲に目を向けるが、それらしい何かは見当たらない。
心臓を…返せ。
才造を返せ!
妖気が溢れて部屋を満たす。
「チリチリと痛い空気を作るんじゃねぇよ。雑魚がよ。」
何処からかわからない声が聞こえる。
「好き勝手暴れまわってるそうじゃねぇか。なぁ?始末させて貰うぜ。悪く思うな。」
冷たい何かが刺さった。
痛みがやっと走り回り、息が苦しくなる。
その傷口からは、妖力がこれでもかと溢れ出す。
「バケモノじゃねぇか。今すぐ楽にしてやる。」
引き抜かれたソレをチラと見る。
このまま終わったって、変わらないんじゃないかとまた思っていた。
でも、才造はここで終わり。
風が唸って、影が踊りだす。
最終話になんかさせない。
次の痛みは心臓を的確に刺した。
もうその頃には意識はそこになかった。
深く深く才造の影に入り込んだ。
動かないとわかっている。
だから、動かす。
死者が再び死ぬことはない。
ごめんね、才造。
体、…借りるね。
お願い。
風を唸らせて伝説を呼ぶ。
起き上がれば才造の刀を握る。
「は?心臓抜き取って、まだ動くか。とんだバケモノの巣だな。」
切られても痛覚は存在しない。
才造の体は重く、動きにくい。
刀を折られても、腕が消し飛ばされても、どうしても負けたくなかった。
負けたく…ないんだよ!
視界が床に落下する。
もう動かないんだってわかった。
「手間かけさせやがって…。あと、一匹居たな。」
本物の風が唸り声を響かせながらぶつかっていった。
影から影に移動して、虎太とで挟む。
「お前まだ動けたのかよ。」
「「
身体中が痛かった。
意識が
風と影の特殊術は、この二人でしか出来ない。
お互い考えることは同じだった。
息が合うからこそ、巻き起こすことが出来る。
倒れる音が隣から聞こえた。
術が途切れるのがわかって、恐怖が駆け抜ける。
「虎…太…?」
嘘だ。
嘘…嘘…嘘…。
嘘だから…だから違う!
「クソがっ!なんて能力使いやがる!」
相手もボロボロなのがわかる。
もう、遅かった。
立てやしなかった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます