第82話 今日も今日とて
片手を地面について、クルリと体を回して避ける。
そして着地してすぐに回し蹴り。
腕でそれを防がれて足首を掴まれぶん投げられる。
本当に見た目で騙す忍だなぁっと思ってしまう。
切ったと思えば影分身。
弱いと見れば強い力。
女か男かまた微妙。
なのに少し違う服装や顔をするだけですぐに男にも女にも化けやがる。
コロコロと声も表情も言葉も変えて、相手で遊ぶ。
師匠がこんなに厄介な忍なのに、なんで俺は強くなれない?
「ほら、一本!甘えんな!目は何処!」
「首だ!」
「心ここに在らずと見えるけどねぇ?あんたはまだそんな強かないでしょ!中途半端な強さは油断を生むって覚えときな!今のあんただ!」
「わかってる!」
「じゃ、集中しなさいな!」
朝からずっとこんな感じだ。
それに才造さんは無口になった。
「っと、
かすりはするけどまだ一度も一本を取れていない。
そのかすりもたまーに師匠がふらつく時くらい。
多分疲れが溜まってるんだろうな。
でも、見た目はやっぱりそういうとこ見せないからわかりにくい。
心配すると「あんたに心配されるほど、こちとら弱かないんでね。」と虫を払うようにしっしっと手で払われる。
背後を取って木刀で突いたと思ったらスルリと避けて木刀を掴まれる。
「忘れた?背後を取るのはあんたじゃない。忍だ。」
つまり正面からぶつかって倒せないようならまだまだだって言いたいんだ。
師匠の真似は意味がない…って訳でもないらしいけど、師匠相手には意味はなさない。
「あんたは王様になる子でしょ?ズルは忘れなさいな。あんたがする必要はない。」
「勝てたらいいだろ。」
「人間様が言う言葉かね。感情ってのは面倒なんだ。綺麗に勝ちな。もしくは、死ぬな。」
「同じだろ!」
「あーあー、わかっちゃいないねぇ。死ぬなってのは勝てなくてもいいって意味。必ず勝つことが正しいわけじゃない。相手を勝たせるのも一手。覚えときな。」
カラカラと乾いた笑い声を立てる。
この笑い方をする時は、大抵師匠は意識がない。
無意識にそういうこと教えて、戦うんだ。
器用だよな。
「あ、お呼ばれされたわ。じゃ、今日はここまでね。」
それだけいってまた影に消えていく。
「あー、くっそー!また取れなかった!!」
悔しい。
でもかすりはするんだ。
けど手加減してるんだろうし、しかも師匠は疲れてるんだ。
そんなんで一本取っても安い褒め言葉程度だっつの。
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