第80話 会話の中で

「忍とカラスの違いってなんだ。何かを守って報酬貰って。そいつの命令で何かを殺して。ただの道具だっていう。何が違う?」

「そうだねぇ、カラスってのは人間様に近いんだよね。道具って言う割にはそういう扱いは全然に見える。」

「近い?」

「そう。感情を許されて、仲間と繋がってなきゃ弱い。一人じゃなんにも出来ないでしょ。人間様と近いんだよ。カラスは人間の進化系か、もしくは亜種的なやつ。」

「じゃ、忍はなんだ。」

「人間を辞めたただの道具。一人でも生きていける。仲間を使う時はただ命令されたことに従う為の行為。感情なんざ持っちゃいない。誰が死のうが関係ない。死んででもあるじを守る。道ずれにしてでも相手を殺す。邪魔なら排除する。味方であっても。金さえ払えばなんだってするさ。」

「でも夜影ヨカゲはそうに見えねぇ。」

「そう見せてるだけかもしんないよ?」

「それは違うな。感情持ってそう。もしかしたらカラスに近いんじゃないか?」

「あは、そうだったら面白いね。でもこちとらは生温いカラスが大嫌いなんだよ。確かに感情はここにある。けど、それはあやかし、鬼のモノだけ。なーんて真面目な話は好きじゃないんだけど。」

「夜影が王様になったとしたらどうする?」

「不安かい?次期王様って話を聞いて、さ。ま、こちとらはそんなお仕事向いてないからさ、そんなの譲ってドロンさ。」

「そんな簡単に逃げれる話じゃねぇよ。」

「知らないねぇ。こちとらは忍だ。あんたら人間様が頂上で偉ぶることなんざ。こちとらはその偉ぶる主様に仕えるだけの道具なんだから。」

「気楽だな。」

「そういう無駄なこと考えるのはダルいんでね。」

「なぁ…夜影が喋ってること全部嘘に聞こえる。」

「あっはは、そりゃ良い。全部嘘ってね。あは、本当、あんたって面白いね。」

「意味わかんない。」

「ふっ、クク、いやぁ面白いよ。嘘に決まってんじゃん。言ったでしょ、忍は騙し討ちが本領なのよ。そんで使い捨てね。ちゃんと使ってちゃんと捨てる。ね?」

「じゃぁ、今笑ってんのも嘘だっていうのか?」

「あー、おっかしいのー。あっはははは、嘘かどうかなんてそんなモンこちとらが答えたって意味ないんだよ?あんたが信じた方にしか、事は進まないんだから。クックック、ガキはこれだから。」

「な、何がそんなに面白いんだよ!!」

「別に。なんにも面白くないさ。だから笑うんだよ。くだらない。人間様が悩んでることなんざ忍にわかるわけないでしょ?満足する答えがいちいち聞けば返ってくるとでも思ってんの?」

「いや…案外夜影って凄ぇこと言うよな。」

「はぁ?あんた、頭可笑しくなった?」

「人間よりまともなこと言ってるように聞こえる。」

「そりゃどーも。人間様みたく夢見て生きてるわけじゃないしね。ま、あんたはまだガキだ。遠慮なんざしなくていい。もっと自由に生きればいい。」

「それが出来ればな…。」

「はっ、まぁた言ってるよ。縛られた中でいかに自由に息をするか。それって結構大事よ?」

「なにそれ。」

「自由が欲しけりゃもがけ、死にたかないならもがけ、望むんならもがき続けろ、ってこった。ま、これは受け売りだけどネ。そんじゃ、休憩はここいらで終わり!」

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