第78話 薬となれば口開く

 何処に居るのかわからないから走り回って探す。

 どんな人かもわからない。

 と、何か雑草を手に歩く男を見つけた。

「あの、さいぞうって人ですか?」

 ギロリと睨まれて、後退る。

 ヤバイ人かもしれない……。

 殺される…?

「あの、ネコミミの女?男?よくわかんねぇけどそんな感じの奴に言われて…。」

「知ってる。」

 喋ったぁあああ!!!!

 無口じゃなかったのかよ!!

「ったく、お前みたいなガキと喋るのは嫌気が差す。」

「え、あの、」

「どうせワシを喋らせてみろとでも言われたんだろうが、お前が無口相手でも会話出来るようになるまでは喋ってやる。来い。薬を扱えるようになれ。薬草からだがな。」

 置いていかれては困るので駆け足でついていく。

「その雑草って何に使うんだ?」

「薬草だ。これはお前にはまだ早い。お前は先ず作れるようになっておいて損はないモンを覚えりゃいい。」

「例えば?」

「なんでも聞きゃ答えるとでも思ったか?黙って見とけ。聞け。覚えろ。お前が喋る必要はない。」

 怖ぇよ…。

 っていうか、忍ってのはこんなにひでぇ扱いしてくるもんなのか?

 冷たくないか?

「こいつはクズっていう。根を使う。発汗、解熱に煎じて服用する。ミシマサイコってやつも解熱にいいが加えて炎症を除くのにも使える。そしてこれがメハジキ。めまい、腹痛等に用いる。取り敢えずこの三つだ。」

「な、なんで解熱とかなんだ?」

「損はない。それだけだ。金にもなる。忍の薬は良く効くと評判だからな。」

「そうなのか?」

夜影ヨカゲが裏で薬売って稼いでるからな。何処行こうが忍の薬は良く売れる。夜影なら、不味い薬も甘い薬も作れる腕だ。」

「へぇ…凄いな…。」

「だから覚えろ。売る気はなくとも自分に使える。市販の薬より効くのは確かだ。上手く作れたらの話だがな。」

 思ったより喋るな…。

 薬とか薬草の事になるとってやつか?

 場所を移動して別の小屋に入る。

「用なく入るなよ。薬小屋に置いてあるモンは触るな。頼まれるか夜影がお前に良しと言うまでここを使うな。ワシと居る時は構わんが。」

 トントンと指で床をつついて俺を見る。

 えっと…多分ここに座れってこと…だよな?

 座ると薬草を目の前に置かれる。

「言う通りにしてみろ。完成度は最初から期待はしてない。取り敢えず言われた通りに作業しろ。それからだ。」

 いつの間にか日が高くなっていた。

 才造さんの説明と手を見聞きしながら、さっき外で説明された薬草とは違う薬草で薬を作る。

 何故なのかはわからない。

「ちなみに言うが、外で言った薬草は次回に回す。今日は道具の使い方と薬草の扱い方を覚える為だけだ。夕方夜影が帰ってきたら今作った薬を渡せ。」

「え!?じゃぁ、使うやつ作ってたのか!?」

阿呆あほか。素人の薬を誰が信じて使う?薬の評価を受けろってことだ。どうせ夜影なら飲んでも効かん。」

「ちなみにこの薬の効果ってのは?」

「麻痺、腹痛、痙攣、吐き気、頭痛。」

「それを…飲むのか?」

「だからワシは効かずとも飲まん。夜影に任せる。ワシの薬が効かん奴がお前の薬が効くとは思わん。」

 大丈夫…なんだろうけどそれはどうなんだろうか。

 仮にも仲間なんじゃないのか?

 実験みたいじゃんかそれ。

「さて、ワシは仕事に戻る。お前は伝説の忍のとこへ向かえ。探す時は工夫しろ。」

 それだけ言うと作った薬を持たされ薬小屋から出された。

 才造サイゾウさんはさっさと何処かに消えてった。

 伝説って……!!!

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