第71話 伝説忍兄妹VSカラス

「お前が『しのび』か?いや…目撃情報と違うな……。」

「『しのび』が一人とは限らないだろう。さっさと捕まえるぞ。」

 そんな会話が聞こえる。

 天井から突如とつじょ瓦礫がれきが降ってきた。

 それが黒服を散らした。

 ほこりが収まるとそこには伝説野郎が腕を組んで立っていた。

「仲間…か?」

「くそっ!どっちにしろ捕まえろ!」

「コイツも目撃情報通りじゃねぇ!」

 確実に夜影ヨカゲのことだとわかる。

 ワシも伝説野郎も違うなら。

「ハイハーイ!影の中からしのびちわー!」

 何かワシの影からまた勝手に変な挨拶してやがる!

 しのびちわ、って何だよ!!

 忍とこんにちわの掛け合わせか!!

 要らねぇ!!

 いや…というか……

「お前ら何しに来やがった?」

 刀を振れば夜影は刀で防いだ。

「おっかない顔しなさんな。」

「元からこの顔だ。」

「あら、そら失礼しましたー。」

「で?」

「いや、カラスを蹴散らしに。」

「は?」

「コイツらの狙いは聞く限り忍じゃん。だから、来てやったわけよ。カラスのなり損ないに会ったことあるしね。(一応主から許可も貰って来てるって。)」

 目と口でそう言われる。

 刀を引いて、溜め息をつく。

 動ける体じゃない筈だろうが…

「カラスは集団行動が得意で、単体じゃ雑魚の極みらしいんだよねぇ。だからちょっとコツコツ量を減らしてやろうかと。」

 そう言うと包帯を全部シュルリとほどいた。

 怪我は見当たらない。

 化粧でもしたか?

「そんじゃ、元伝説の影、たんと召し上がれ♡」

 元伝説…?

 カラスと言ったか、ソイツらが夜影の影に沈められていく。

 それを見た幾つかは上へと飛んだ。

 上空なら地の影には呑まれまいと思ったか。

「さぁさぁ皆さんいらっしゃーい♪只今ただいま上空では、現伝説の風が影へ叩き落としてくれるというサービスを実施中!もれなく、運がいいカラスは影に落ちる前に死にますよー?遠慮なく…残らず死んで貰おうか?」

 口が裂けそうなほど三日月の笑みを浮かべて影で呑み込んでいく。

 上空では夜影が紹介した通り伝説野郎が構えていた。

 よく考えれば夜影はこっちの世界に来てからというもの、仕事が雑になったように思える。

 全て処理して片付けるようになりやがった。

 そう5分もかからない内に、影に沈まなかったカラスは一人になった。

「ほーら、才造サイゾウ。一羽ずつ翼をもぎ取れるよ?」

「ワシは探れと言われたんだ。殺せとは言われてない。」

「つまり殺んないってことね。ま、いいけど。」

「お前怪我は?」

「伝説舐めて貰っちゃ困るなぁ?こちとらも虎太コタも、あの程度ならちと休めば平気なんだよ?」

「なんでも殺せばいいってもんじゃないだろうが。」

 夜影はワシに背を向けると、その手の刀を床に刺した。

「才造。」

「なんだ?」

「こちとらは鬼の子だ。」

 それだけ言うと取り残されたカラスへ向かって飛んだ。

 そしてその拳で顔面を思い切り殴った。

 カラスはぶっ飛ばされたが虎太が腹に手をぶっ刺して血を更に影へ落とす。

 最早もはやカラスに意識は無かったが、構わず今度は夜影が腕をその爪で切断する。

 鬼………か。

 殺しを楽しむ種族じゃないか。

 人を食う種も居れば、そうじゃない種も居るが、鬼はどの種も人等の弱いモノを殺すことを好いている。

 ゆえに、鬼が人間を我が子として育てるなんてことは有り得ない。

 それでも言うか、お前は。

 鬼に育てられた、と。

 カラスをバラバラにすると、振り向いて影からもう一人のカラスを出させる。

 その顔はやけに楽しそうで、鬼と重ねても充分だ。

 お前は何なんだ、夜影。

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