第70話 カラスの巣
忍び込んだ先が忍のような集団の巣だった。
ワシが忍び込んだことにもまだ気付かないのは、こいつらの警備がザルなのかそれともワシの腕なのか。
観察してみるとどれも最低二人で行動し、黒服にくちばしを模したような仮面をつけている。
どうやら単独行動は一切しないようだな。
それにしても、身を潜めるにはその場所が限られてしまう。
「本当にいるのか?」
「『しのび』とやらのことか?」
「あぁ、そうだ。情報からすればかなりの手の者らしいが、実際姿を見たのは一人だろう?」
「それは目撃者の数か?」
「目撃者もソイツも一人だ。」
「国王からの依頼だからな…。居ようがいまいが探すだけだ。」
そう会話しながら通り過ぎていく。
目撃者というのは、コイツらの中の一人か。
ワシか、
目立ち過ぎたな……。
移動した方がいいか、それとも動かない方がいいのか。
溜め息もつけずに息を殺して会話や独り言を待つ。
「『しのび』って奴はどんな奴なんだ?」
「さぁな。見りゃわかるんならいいけどなぁ。アイツは影がどうのって言ってたが。」
影………夜影か!
夜影が目立つような事をしたとしたら、生首を持って帰ったあの時くらいじゃないか?
もしくは、屋敷に探りに行った筈が処理までしてたやつか。
お前が目立ってどうするんだ馬鹿。
突然、何処かで聞いたことのある笛の音が響いた。
これは…
忍だけに聞こえる筈の音が何故?
「おい、集合だ。行くぞ。」
コイツらの集合合図に使われているのか?
ということは忍笛の音は聞こえる程度には耳が良いのか。
なら尚更音には気を使わなければ。
黒服が向かう方向には大きな広い部屋がある。
その天井は高く暗い。
天井裏で板を外してずらし、覗く。
「これより、『しのび』を捕獲する。幸運な事に、この我らの巣へ一匹侵入しているらしい。ソイツを探し出し、縛り上げろ!」
忍を捕まえるには、それ専用の道具がいる。
縄や鎖やらでは逃げられてしまう。
それくらいのことが出来ないのでは話にならない。
だが、まさかバレていようとは。
板を戻して、まずは戻るかそれとも留まるか考える。
今、主の元へ帰れば動けない夜影が危ういかもしれない。
取り敢えず動きにくいここからは離れよう。
移動中のこと。
「居たぞ!アレだ!」
その叫び声と同時にどんどん集まってくる。
縄を構えて、四方八方から投げられるが、全て切り払った。
まずいな…多すぎる…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます