第65話 女狐が鳴いた
「何でも出来るんだな。」
「まさか。幾ら優秀なこちとらでも、出来ないことくらい数えきれないほどありますよ。」
まだ
妖しげな雰囲気はその笑みからなのか、それとも
笑み、というだけで何故そんなにも沢山の種類を見せてくるのか。
脳ミソを直接撫でられるような声は、まるで誘うように揺らいでいるのだから、わかっていても騙され食われてしまいそうだ。
「さっきお見せ致しました、分身へ自我を持たせるのもまた難しいんで失敗もやはり多い。
「危うい?」
「呪いをかけるのにも術者の寿命を削る行為になるんです。それと同じように、本来互いに合わさることのない術同士を複雑に絡めて無理矢理生み出すのにも色々と削られるんですよ。
また、ふぅっと吐き出された息は、狐の姿を形作りながら消えていく。
ケラケラと笑うそれは今の上品さを欠く様に見えるのに、不思議と狐のように笑うそれが雰囲気に呑み込まれて違和感さえ見せない。
「まぁ、鬼も
「簡単に言うと、どんな
夜影は高い声でクククと喉で笑った。
「簡単に言って欲しいんですか。鬼は破壊を好む者。妖は命を嘲笑う者。忍は……。」
そこで言葉をとぎらせて、息を止めた。
それから沈黙がゆっくりと時間を進めていった。
「忍は?」
そう問えば遠くを見つめて息を吸った。
「忍は影に生きる者。何にもありゃしない。」
また、クククと喉で笑って煙管を口にする。
何が面白いのかはわからないが、笑う夜影は何かを楽しんでいるようにその目を揺らす。
「こちとらは人や忍や鬼よりも、妖に似たんだねぇ。」
煙管をスッと俺に差し出すように向けた。
何を示しているのかはわからない。
首を傾げる俺にまたケラケラと笑った
「
吊った目は酷く楽しげにただ煙管を差し出す。
それに触れれば煙管は突然刃へと姿を変えた。
「その毒、刺せば必ず命を持ってくよ。間違ってもご自身に刺さぬように。」
「…倒せるか?」
「
ドロンと煙を巻いて姿を消した夜影が残した紫の煙は未だに消えない。
しかし、煙はまたさっきのように狐の姿を作り、俺の周りを飛び回り始めた。
これも、妖の足跡なのかもしれないな
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