第59話 生きる道にすがりつけ

「答えろっ!あんた、何でこんなモンが此処にある!?何で持ってる!?」

 この館のあるじであるソイツの四肢を切断し、止血までして生かす。

 そして首を掴んでそう叫んだ。

 紙を見せつけながら、殺気を含める。

「お前…鬼子おにごなのか…?」

「知ってるってこと?じゃぁ、あんたの先祖が石を作ったっていうのかい?」

「あぁ…そう……だ。まさか…鬼子に…会えるとは……な。」

 手を離して床に落とす。

 鬼子、鬼子と呼ばれるのは息苦しい。

 あぁ、何で、何で今更このことを!

「あんた、知ってんだろ。石は何処?何処に、ある?」

「知らない。」

「嘘だ。言え。」

「嘘じゃない。わかるのは…紙だけだ……。」

「紙は全部で何枚あるって?」

「二枚だけだ。……この家が……前に焼かれた時…その二枚だけが……残ったんだ。」

 イライラしてしょうがない。

 ダンッと床を叩く。

 これじゃ足りない!!

「あんた、もう用済みだ。死んでよ。」

「ま、待ってくれ!…い、命、だけは!」

「うるさいな。うちの主を始末しようなんざしてたあんたが死ねば困んないんだよ。」

「何故それを!?」

「さぁね。」

 悲鳴が長いこと館に響いた。

 じっくり時間を掛けながら、殺したソレは最早面影がない。

 リャトも殺すとするか、それとも辿るか。

 牢屋に行き、リャトを見下ろす。

「お前!これ、解けよ!!」

「いいよ。終わったから。後は、あんただけ。」

「俺………だけ?」

「そう。あんたを片付けるだけ。」

「待て!止めろよ!そういうの!」

「なら、どうしてくれる?あんたの主へ案内してくれる?もし、そうならあんたを殺さずに済むんだけどねぇ?」

 リャトは必死に頷いた。

 怯えた目が、残った生の道へすがりついている。

「案内したら、見逃してくれよ?」

「勿論。あんたに用は無くなるからね。けど、あんたの主は殺すよ。」

「も、もし俺がお前を裏切ったら?」

「あんたがこちとらを裏切れるのならすればいいんじゃない?けど、殺すよ。今のこちとらにはそんな優しくしてる余裕はないから。」

 マスクをし直しながら見下してそう言葉を捨てた。

 精々生ようと道にすがりついてな。

 その道を後ろから削って削って、食い千切るか、立ち上がらせるかは気分次第なんだから。

 鎖を解いてリャトを走らせる。

「止まったら片足引きちぎるから。」

「わ、わかった。」

「嘘ついたらその舌も引きちぎる。」

「…うん……。」

「敵が来ても走りな。もし、そんな理由で引き返そうとしたら、腕を引きちぎる。」

「わかった………。」

「こちとらを振り切れると思わないでね。あんたの影くらい、いつでも捕まえられるから。」

 一つ、一つに脅しをかけながら走らせる。

 まぁ、実際本当にやられたらやるけどね。

 さぁ、すがりついて走れ。

 死にたくないのなら

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