第58話 鬼子が
本来、こちとらは忍隊の
勿論、他にも書類処理があったり、忍小屋で薬を作ることくらいするし、主が望めば護衛、鍛錬に参加等もする。
主に一番近く、忍としてでは直にその声に従うわけで。
主がこちとらではない部下に直に命令することなぞ稀だ。
こちとらが長期任務等で不在の時は
そんな感じだったから、長か副長にならなければ直に何かしら受けることはありえない。
今、才造だけが主の元へ魂なくとも帰っていて、こちとらは戦場へ捨て置かれ死んだと報告がいったままなら、才造が自動的に長へなり、主が副長を決めるだろう。
ただ、こちとらが長になった時のように才造を押し退けて主が直々にこちとらを長にしたりなんてことのように主が誰かを長にしたなら、才造は変わらず副長として……。
心配なのは、主は確かに忍使いの家に産まれ育って忍使いにはなったが、忍を上手く使えるかと言えばそうでもない。
溜息が喉につっかえる。
本当ならこの異世界での主を捨てなければならない。
忠誠を誓ったあの日が嘘になる。
石を見つけて、方法を探すしかない今、才造が生きて帰れるかも危ういというのに。
そう考えながらどうやら無意識に己の体は勝手に、望んだ封筒を手にしていた。
どうやってここまで来て見つけたのか記憶にないが、それほど考え込みつつ動いたのだろう。
気を付けなければ……という程でもなく無意識でも戦える体なのだからまた便利だ。
封筒を開けて解読術をまた使う。
『転生を繰り返す人間がいる。ソイツを我らは
それを読んだ時、脳裏に灰色の部屋が浮かぶ。
息が苦しくなり、喉が焼けるように痛かった。
そう、そこで殺されたんだ。
アレは毒ガスだったのか。
何故?
何故こんなモノがこの異世界に存在するのか。
どういうことだ。
鬼子?石?
片目の赤い、爪が鋭い、目付きの悪い…転生を繰り返す者。
鏡に映った己を見ながら、一つ、一つと確認していく。
間違いない。
己の事だ。
紙をくしゃりと強く握り締める。
ここに来て、どれだけ時間が経った?
戦場にはもう、己の死体は無いかもしれない。
帰る体が無いかもしれない。
季節が幾つ過ぎた?
もう、転生をしていて可笑しくないかもしれない。
魂だけがどうして、どうしたら、どうなったら…。
あぁ、落ち着け。
転生を初めてしたのは
この紙はまだ新しい。
でも、書かれてることは古いはず。
暗号化されてるのは誰かの何かしらの能力で移された際にそうなってしまったのなら?
いつだ。
いつ、己は…。
わからない。
初めて死んだのがあの頃じゃない。
初めて忍の人生を生きたのがあの頃ってことだ。
それなら、いつ己は産まれたのか
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