第49話 まだ逃げる

「おやおや、避けてしまったか。」

「あんたねぇ…。」

「そう怒らないでくれたまえ。君を檻に入れるのは難しいことだが、こう捕まえるのは容易いだろう?」

 するとガッと伝説さんに掴まれ、後ろで手を固定された。

 ぐ油断しちゃうんだから…というより相手にツッコミ入れようとしたおのれが悪いけど。

 何処かの悪役なら、相手の言葉くらい待ってくれるのにねぇ。

「伝説さんのが力強いんだよねぇ。なーんて、ね!」

 勢いよく伝説さんの顎へ頭突きしてやった。

 その手がわずか緩んだのを狙って思いっきり前へ体を傾けて、腕を伸ばす状態にすると、その手の持ち方がズレる。

 それをまた狙って手を思いっきり引っ張れば簡単にその手から逃れることが出来た。

 けど、そんなんで直ぐ逃げれるわけじゃないのが残念。

 急いでガシッと胴を両手で掴んで引き寄せられる。

 抱き締める形に捕まえられ直した。

「あー、もう!しつこいんだけど!!」

「(逃がさない!)」

「離せぇー!!」

 爪を立ててガリガリと引っ掻く。

「そのままでいい。捕まえておいてくれ。いい道具がある。」

 才造サイゾウは先にあるじと帰りやがったから居ない。

 まぁ…酷いっちゃ酷いけどそうするのが一番っていうのもある。

 主に被害がいかないから、さっさと逃げてくれて構わない。

 けど、せめて才造…分身くらいは残して行こうよ?

 仕方がないから手を回して伝説さんの道具に手を伸ばす。

 手を縛られるよりか今の状態の方がマシだっていうね。

 えーっと、ここらへんに、確か…あったあった。

「(何してる?)」

「こちとらが、伝説さんのこと知らないとでも?此処に便利なモノ持ってるじゃなーい♪」

「(………!?)」

 取り出して口にくわえると、吹いた。

 風に似た音が鳴り、その道具を胴として翼が開いた。

「わお、最新型!さて、これをどう使うでしょうか?」

「(………っ。)」

「伝説さん、しっかり掴まっておくか、手を離すか選んでねー。」

「(待て!)」

 焦る伝説さんを無視してそれを地面に突き刺してボタンを押した。

 その途端、ロケットかのように一気に上空へ飛ぶ。

 衝撃で伝説さんの手が離れたせいで、やっぱり一人上空に逃げられた。

「まさかこんな道具、手の届くとこに隠してるなんて、普通思わないよねぇ。流石こちとら。」

 ま、手に届かなきゃ意味ない道具だけど。

 現伝説のお兄様ったら、昔から変わんないんだから。

 使用方法としては若干違うんだけど、こういう使い方もあるってことね。

「って……あんたコレ最早もはや要らないじゃん!」

 凄いスピードでグンッと上空に飛んでくる。

 手を伸ばし、足を掴もうとしたところでボタンを押しながら伝説さんに思いっきり投げた。

 この距離だから確実に当たる。

 掴もうとしていた手でそれを防いでる間に、急降下する。

 が、今度は腰に手を回されそのまま空中で止められた。

 少し息が乱れているのは焦り、急いだせいだろうけどここまで掻き回したのにまだ全然ってこと。

「(いい加減…大人しくしろ…。)」

「やなこった。手が尽きるまで抵抗するね!」

「(なら、尽かせるまでだ。)」

 どうやら伝説さんを結構やる気にさせちゃったみたい。

 まだ序の口なんだかんね!!

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