第46話 からくり

夜影ヨカゲ、いつの間に部屋を改造したんだ?」

 音も何もしなかったし、全然そんな様子も見せなかったのに、いつの間にやら夜影の部屋が元の部屋の面影を見せないほどの変わりっぷりを見せていた。

 いつからだ?

「今更お気付きですか。ちょいとからくり仕掛けて見ただけですよ。」

「からくり?」

「ま、必要な時にでもお教え致し…敵確認!集団!アジトに侵入!」

「おぉう…。いきなりだな。」

 正直この変わりようには部屋に気付いた時くらいビビった。

 扉から大きな音がする。

ちなみにその扉は忍でさえ開けるのは困難ですよ。」

「あれ、俺ってどうやって入って来たっけ。」

「どうやって入って来たんですか!?」

 ガタガタと開けようとする相手は、一ミリも動かせていない。

あるじ!こちらからお逃げください!囲まれています!」

 窓を指差してそういうので窓を開けようとしたが、押しても引いても横に引いても開かない。

「からくりいち、その窓は紙一枚だけで開きます。なお、普通にそうやっても開きません。」

「先に紹介してくれ!」

 夜影はペラペラの一枚の紙を取り出して、窓の隙間の一番下に差し込むと、上へそのまま滑らせた。

 すると軽く押しただけで窓は開く。

「どうなってるんだ?」

「余裕がある時にでもご説明しますから、出てくださーい。」

 出ると勢いよく窓をこちら側にバタンッと引いて閉めた。

 すると扉をなんとか破って侵入した敵が今度は窓をガタガタさせる。

「え、閉まんの!?」

「勢いよく閉めればまたこうなります。いやぁ、便利便利」

 そう言いながら今度はシャッと押し入れを開けた。

 いや待て、だからいつの間にそんなモノを…。

 何にも入ってない。

「はい、どうぞ。」

「何が!?」

「いや、入ってってください。」

「ここに隠れるのか!?」

「あ、いえ、これも通過するだけです。」

 押し入れの中の壁を押すとクルリと回り、向こう側へいけるようになっていた。

「からくりです。」

 なにこの面白い仕掛けは。

 取り敢えず言われた通り、通り抜けて廊下へ出た。

 だが、また別の敵がこっちへ向かってくる。

「はいはいお次はこちらですよー。」

 なんかアトラクションに行くみたいなノリで手を引かれた。

 そして壁をまた押してクルリと二人で向こう側へ。

 これもあの押し入れと同じからくりか。

「この扉は一回転しないのであぁなります。」

 壁をバンバン叩いて焦っているようだ。

 なんか敵を弄んでる感じがして申し訳ないなこれ。

「んで、ここを開けると…。」

 床をパカッと開けると深い穴がある。

 だからお前はいつの間にこんな落とし穴を!?

「で、こっちに行けばまた別のお部屋ですよー。」

 案内されるがままついていく。

 後ろで悲鳴が響いた。

「あ、落ちましたね。」

 うん。今のは確実に落ちたな…。

「3mあるので。横穴から脱出は可能ですが、その先へ行けばもう命はないでしょうね。こちとらや才造サイゾウが行けばただの逃げ道ですが。」

 確かに焦って壁をやっと通り抜けても暗くてわからずに足を踏み出したら床がないなんて簡単だけど本当にやられたら笑えない。

「前の人が右を押して入ったら、おのれも右を押せば入れると勝手に思い込んでしまう人の心理を利用したからくりでして、一回転するものじゃなくちょいと焦らせ落とすという計画が見事に成功してくれてこちとら嬉しゅう御座います。」

 クックックと嘲笑する表情は、仲間といえどゾクゾクしてしまう。

 助かるが、敵に回したら生きて帰れないなこれ。

 知らない間にこんなからくりとやらを幾つも仕掛けられていたとは思わなかった。

「ま、忍の屋敷ってこんなモンですよ。普通よりまだ全然少ないですけどこれからまだ増やすんで後々のちのちご紹介させて頂きます。」

「おう…。あんまりやり過ぎるなよ?」

「臨機応変に使い方を分けれるからくりばかりですから、大丈夫ですよ!」

 いつかイタズラでえげつないモン仕掛けられたりしないか少し不安になってきた。

 けど、今回見たやつは活用していこう…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る