第35話 才影コンビ
「
「監禁されてるな。アレだ。」
「さて、どうしましょーね。」
顔を見合わせて、目を細める。
あんた行きなさいよ。こちとら害虫殺すから。
いや、ワシが殺す。救出はお前の方が上手いだろ。
という無言の言い合いが数秒間続いた。
「才造、あんたわかってんでしょ?」
「だから何だ。」
その言葉が耳に届くと同時に、その館へと姿を消した。
忍び込むのは朝飯前とでも言おうか、見張りに見つかることなくスルスルとそこへ向かう。
天井の板を静かに外して横へズラす。
「(一発!)」
メルへ向けて真っ直ぐ降りてメルの口を塞いでそのまま影の中へ入り込んだ。
これで救出終了となる。
才造は、天井裏を走って、獲物を狙う。
本当なら一人で終える仕事なのだが、どちらもその首を噛まなければ気が済まない。
どうせ、才造なら獲物の居場所もうわかってるだろう。
なら、才造を追えば首は落ちた後でも四肢くらいは食える。
館に笑い声が響いた。
その途端暗闇が訪れる。
誰も生きて
夜影が通った後は真っ赤に染まって道になってゆく。
血肉が落ちる音だけで、悲鳴も出させない。
ドアをぶち破って入ると、丁度才造が何者かに吹っ飛ばされた。
そこには獲物と伝説の忍が立っていた。
「あらら、どちら様で?」
「君らこそ誰だい?」
「誰だっていいじゃないの。ま、あんたの首が欲しくて来てるんで、大人しく寄越してくんない?」
「それは出来ないな。」
才造は立ち上がるとギロリと睨んだ。
あぁ、伝説さんもいるから相当腹が立ってるんだろうなぁ。
「伝説さん。お願いなんだけど、邪魔、しないでくんない?こちとらあんたを嫌いになりたくないんだよねぇ。」
「(それは出来ない。仕事だ。)」
「こっちも仕事だっての。いいからさぁ……寄越しなっつってんでしょうがっ!!!」
妖刀と忍刀を握り、突っ込んだ。
こっちだって頭に来てんだ。
才造以上にね。
伝説さんと刃をぶつけ合う。
殺気と妖気で鋭さが増していく。
突然、ふっと力が抜けた。
妖力の使い過ぎと、疲労が伝説の忍の能力を手助けしたのであろう。
弱体化とスピード減少だ。
伝説さんに押し倒され、手を塞がれる。
「あんた…何してんの。」
敵なのに、殺そうともしないで。
馬鹿じゃないの?
捕らえて情報を吐かせるんだったら、さっさとそうすればいい。
「君、雇われる気はあるかい?」
呆れた。
「要らないデショ。こちとらより優秀なのを雇っておいてそれはないんじゃない?」
「そんなことはない。どうやら伝説の忍も君のことを気に入ってるみたいだからな。」
『も』ってことはコイツにもか。
いやいや、それは拷問か何かですか?
お馬鹿さんなのかな?
「君に余裕はないはずだがね。」
「いやぁ、そうでもないですよ?伝説さんも知ってるんじゃありません?」
「(………?)」
「こちとらのやり方ってのがあるんでね。例えば、こうやって。」
伝説さんの額に頭突きを食らわせた。
いくら伝説だって、痛いモンは痛いでしょ?
伝説さんはギリッと歯を噛んだ。
なんとなく、痛かったんだろうなぁっと思う。
「さて、その程度で何が出来るのかね?」
「何がって、それ教えちゃマズイでしょ?ねぇ?伝説さん、今ので何が変わったと思います?」
ニッと笑って、子供がなぞなぞを出すが
正解を言えばこれだけじゃ何一つとして変わらない。
まぁ、伝説さんが痛みを感じただけかな。
何が出来るか、変わるのか。
そういうのって、あちらさんが考えることでしょ?
「ねぇ、才造。あんたならもうわかるよね?」
「伝説野郎がわからないとはな?」
もうこの部屋にはいない才造が何処からかそう答える。
才造ってば逃げる準備が早い早い。
「(何をした?)」
「今更こちとらが痛みで言葉を吐くと思った?」
ギリギリと手を握り潰すかのように力を入れるが、全然痛みはない。
「えへへ、伝説さんったら珍しくお馬鹿さん。」
「(答えろ。)」
「答えて欲しけりゃ首寄越しな。」
「(何を仕掛けた?)」
「伝説さん、焦ってんの?気付かない?好きなら、気付いてくれてもいいんじゃない?」
伝説さんの手が首へと変わる。
手じゃ余裕だから、首を攻めるって?
残念。
「伝説さん……時間切れだわ。」
最後その手からドロリと消えた。
屋根から走って飛んだ。
それからまた屋根をつたって帰る。
「お前、よく騙せたな。」
「こちとらが騙せない相手なんざいないのさ。にしても惜しいことをした。」
「で、目的は達成出来てるのか?」
「影ん中だよ。寝かせてる。」
アジトへ向けて闇に紛れて仕事を一時終了させた
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