第34話 契約の呪い
「
そういわれても、才造が殺したメルは偽物であり、オルカの影になっていた奴は食った瞬間に消えたのでソイツの一部だったんだろうからもう終わりだとして。
どちらを手伝えばいいか…。
「あ、オルカさんは死にたてのご兄弟、もしくは死にかけのご家族等はいらっしゃいますか?」
「何その恐ろしい質問。要らないゴミ回収的なノリで聞くのやめてやってくれるか?」
「あぁ、すみません。つい。」
「つい!?」
「居ないのよねぇ…。でも、ペットなら……。」
「ペットの影をオルカさんの影にするってのもアリですが、死んでから時間が経ちすぎているのはちょいと…。」
「出来ないのか?」
「いやぁ……見えない影を縫うのはそのペット様の意思まで必要といいますか…。」
つまり、面倒だってことだろうな。
出来ないわけではないが、手間が掛かりすぎる。
「いっそ、新品にしますか?中古を無理にお使いにならなくても良いんですよ?」
「何その物みたいな扱い。」
「ま、ペット様が一番良いんですがね。で、どちらにいらっしゃるんです?」
「こっちにお墓があるから。」
違和感…というか可笑しい感じがするのは忍だからか?
墓の前に立つと
「あんた様の影、ご主人様にお渡しする気はありませんかね?」
夜影の声が重く心臓を撫でるような普通じゃないものへと変化した。
「感謝致します。では、命尽きるまでの契約と、永遠の契約、どちらがお好みでしょうか?」
夜影にはオルカのペットの声が聞こえているのかもしれない。
優しく撫でるように。
「えぇ、この契約はこちとらと結ぶものではありませんから。ご主人様と共に再び歩んでくれますか?」
「(……………!!!)」
何か声が聞こえた気がする。
耳に囁くでもないそれは響いたように風が運ぶ。
「それでは参りましょう。」
夜影はズッと墓の土に手を刺した。
いや、そこに出来た影に、だ。
引き抜いた手には指輪があった。
「それっ!!」
オルカが驚いたように叫んだ。
「えぇ。ペット様が信じて預けてくださいました。これからこの指輪に契約の呪いをかけます。この指輪、外すことは許されませんからね。」
「呪い?」
「本当は、こういう呪いは好きじゃないんですよねぇ。ペット様をご主人様に縛り付ける術になりますから。」
辛そうにそう指輪を撫でながら呟いた。
それは経験がそう言わせているようだった。
「色や染まれよ、声や繋がれ。命を捧げよ、その指通し、魅せよ影。」
撫でながら優しい声でそう呟く。
それは夜影の声ではないように聞こえる。
指輪に黒い影が渦巻く。
繰り返し繰り返し、同じ言葉を呟く。
「息よ一つに、生きよ永遠を。」
涙が一つ、目から零れ落ちた。
それは指輪に落ちて消えていった。
夜影はオルカの手を取ると、指輪をスッとはめた。
そしてオルカの影を荒らくぶった切った。
その瞬間のこと、オルカの足元から獣の姿の影が地面に浮かび上がった。
オルカは涙を流しながら影に手をついた。
「ごめんね、ごめんね。」
影を撫でながらオルカはそう言った。
夜影は座りこむと、頭を抱えた。
「どうした?大丈夫か?」
「お気になさらずに。
それだけ残して姿をその影に沈めた。
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