第27話 食うか食われるか
首を斬れば死ぬようなモンスターだけじゃないのが面倒だ。
人ならば心臓か脳みそか、そして首かを本体から離せばそれで済むというのにモンスターによっては斬ってもダメージがあまり入らないのもいる。
それにアレは忍術か?
また妖術と組み合わせたやつだろう。
あんな術を忍が使えてたまるか。
もういい、ゴチャゴチャ考えるのは怠い。
忍刀を握り直し、街と夜影に近付くモンスターを蹴散らす。
モンスターの尾を掴み横真っ二つを描けば今度は骨を掴んで引張った。
するとズルズルと骨が外へと引き抜かれてモンスターは動かなくなった。
ふと上空を見やれば伝説の忍が、空を飛びやがるモンスターを切り刻んでいる。
血肉の雨が降り、さらに赤く染められていく。
目の前のモンスターの首に噛み付いて食いちぎり吐き捨てる。
「まだ、駄目か?」
「いや、行ける。ちと、策でも仕掛けようかね。」
ゆるりと立ち上がり、首をゴキッと鳴らした。
うん、と伸びをしてからワシの肩を掴んだ。
「伝説さんの風、使わなきゃいけないんだけど、ちと頼める?」
「風?」
「毒粉を飛ばすの。効くモンスターが多いみたいだからさ。そんで数を減らす。この街の周り一帯毒の霧を回すのには風がいる。」
そういうと肩から手を離して飛ぼうとするが、今度はワシが腕を掴んだ。
「待て。被害が出るだろう。」
「
ワシの手からスルリと逃れて伝説の忍の元へと飛んだ。
珍しい…?
久しぶりに夜影の言葉の意味が理解出来なかった。
夜影の策に乗らない言葉を吐いたことでもなければ、腕を掴んで引き止めたことでもないだろう。
そこまではわかるが、それ以上がわからない。
息を止めて周囲を見回した。
既に状況は進んでいることを知り、息を吐いた。
そこでやっと言葉の理由を理解した。
「了解。」
溜息とともにそう呟いて奥歯に仕込んだ薬を舌で確認した後、耳を澄ませた。
きっと呼吸で数をとるだろう。
決して聞こえはしない。
けれど、感じることは出来る。
風が強くなっていくにつれて、途絶えていく音の中に紛れ込んだ歌声が懐かしさを持って耳を通っていく。
心地良さのある歌声は、何度も聞いた夜影の声の他ないとわかる。
こんな時に呑気だと言う者もいるだろうが、こんな時こそあの歌声が必要になる。
何せ、あれが妖術を使った声の一つで、癒しを目的とするものだから。
いつの間にか焦いていた気も落ち着いて、視野が広がる。
状況に食われるほど、何に焦っていたのやら
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