第26話 影の口へ

 ゾロゾロとあちこちから街の出入口に集まり始めた。

 もう目で確認出来る程の近さまで迫ってきている。

「お前か?アイツのあるじは。聞いたぜ。」

「うわぁ、本当に来てやがるな。」

「手伝うぜ。」

 それぞれがそう言っている。

 きっと、夜影ヨカゲが皆にも声を掛けたんだろう。

 助かる。

才造サイゾウ!」

「はい。」

「状況は?」

「東西南北全ての門に、街にいるほとんどの戦える者がそれぞれ集まりました。敵は街を囲うように攻めて来ております。ですが、みな準備は完了しておりいつでも戦えるようです。敵の数は数えられる程少なくなく、圧倒的ですがそろそろ夜影の害虫駆除は完了する頃でしょう。」

 早口でその報告を受ける。

 近くに居た者も聞こえただろう。

 皆一斉に突っ込んでいった。

 片っ端から倒していくが、数にキリがない。

 才造も一息に何匹も首を飛ばすが、流石にこの数は間に合わない。

 街へモンスターが数体突っ込んで行ってしまう。

 がしかし、派手な音と共にモンスターが弾かれた。

 街に紫と黒に光る膜が張られており、モンスターがぶつかれば電流が走ったようにビリビリと輝く。

「いやぁ、結界張って正解でしたね!」

「夜影!!」

「モンスターに効いて安心しましたよー!」

「お前、どうやって…。」

「それは秘密です。さて、こんだけ数が居ては流石の結界も持ちませんからね。ここは一つ、忍の凄さをお見せ致しましょう!」

 ダンッと地面に片手を勢いよくついて、赤い目を光らせる。

 顔には黒い模様のようなものが浮かび上がり、夜影の影はモンスターへと伸びていった。

 すると、モンスターが次々と影に飲み込まれていく。

 ドプンッと大量のモンスターを飲み込んでしまうと、今度は影から黒い先ほど飲み込んだモンスターの形をした赤い目の何かが起き上がった。

 その黒いモノはズルズルとまだ飲み込んでいないモンスターを飲み込んでいき、それを繰り返す。

 ついにはそこにいたモンスター全てが黒いモノと化す。

 ソレが俺たちを攻撃してくることは無かった。

 ただ、ゆっくりドロリと影に沈んでいって、その影は夜影の影へと戻っていった。

 夜影はフラリと立ち上がると、真っ赤な目と光のない真っ黒な目で、俺を見た。

「夜影…?」

 夜影は真っ直ぐと指差した。

 振り向けばまた別の大量のモンスターが押し寄せてきている。

 夜影は静かにその場にズルズルと壁に背を預けて座り込んだ。

「夜影!」

「大丈夫です……ちょっと…いっきに飲み込み過ぎちゃい…ました……。」

 笑ってそういうが、少しぐったりとしている。

「もう一回…は無理か……。」

「無茶言わないで、ください…よ。」

 その言葉のあと、目を閉じると動かなくなった。

「夜影!!おい!!」

「大丈夫です。死んではいませんから。休まないと動けないんですよ。結構無理をしましたから。」

「そ、そうか…良かった…。」

「ただ、夜影の結界は今ので途切れましたね。もう、油断は出来ませんよ。」

「お前は出来ないのか?」

「ワシはただの忍ですよ。妖術は使えません。」

 フイッと顔を背けて武器を構える。

 あぁ、この結界はにんじゅつ?じゃないのか。

 影の口へ飲み込まれていったモンスターたちはどうなったんだろうか?

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