第25話 害虫駆除

 アジトを出てぐに分身を出す。

 街の外まで影を伸ばしていた甲斐かいがあったものだ。

 影の中へ入り込んで進む。

 一時間以内で掃除を完了させてやりますよ。

 手始めに誰かさんと戦っているモンスターの影から出てその腹をぶち抜いた。

 血とモンスターの悲鳴が飛び散った。

 そのまま宙でクルリと回り、落下ついでにモンスターの脳を真っ二つにする。

 地に足をつければ背でまだ武器を構えている。

「お、お前は…?」

「街にモンスターの大群が接近中。こちとらは街に入り込んだモンスターを駆除することを任されました。」

「はぁ!?街にか!?」

「既にあるじが向かっています。お伝えすることは以上です。それでは。」

 今度の返事も聞かないで、知らせることは伝えておく。

 主一人に任せるよか、街に居る主の同類に向かわせる方がいいだろう。

 嘘かまことかどちらを選択しようが構わない。

 結果モンスターは街の前までは必ず来るのだから。

 分身の視界を頭で全て見ながら操作もしながら、目の前の害虫を殺していく。

 どうせ分身なら、攻撃を受けても一向に構わない。

 消えるだけの命のない影がダメージを受けたとて、こちとらにそのダメージが与えられることはない。

 取り敢えず、この街に結界を張っておく方がいいだろう。

 どうせこんな大きな結界を張るには時間がかかる。

 術が早いか能力が早いか、もしくは術が強いか能力が強いか。

 そんな差だろうし少しでも時間が稼げれば主たちがどうにか策を考え実行するまでに至ることが出来るだろう。

 出来なくとも遅らせることさえ出来れば何かしらは出来る。

 振り上げた刃がモンスターの目を潰す。

 音が弾けて耳をつんざく。

 貫かれた心臓は、鼓動を遅れて停止させて、口からは雑音が響く。

 人で無くとも変化の無い作業。

 生き物の息を止める簡単なお仕事。

 あと30分だ。

 四肢を切り落として首を投げる。

 舌を引きちぎって骨を砕く。

 抉りとった内臓と、流れ出す液体の臭い。

 慣れ親しんだこの感触は、恐れる必要のない代物だった。

 死んでしまえばただ肉の塊だ。

 それを間違いでもないのに嫌悪する心は人が感情を移した為でしょう。

 目の前で人の皮を被るモンスターが背を向けている。

 そのモンスターの前には人がいる。

 そのモンスターの首を一息で斬った。

 血がその人とこちとらを赤く染めた。

「お前!!よくも!!」

 怒鳴る人は武器を構えた。

 人とそうでないモノの違いがわからないということは、それだけ人に触れていないということだ。

「これは人様じゃぁない。」

「うるせぇ!お前の方が化け物じみてらぁ!!」

「なら、こうしてみればわかるわけ?」

 皮を剥いで見せた。

 人の皮の中から人のモノとは思えない中身が待っていた。

 これでも否定するならそれでもいい。

 兎に角、人を殺してその皮を剥いで着ただけのモンスターだ。

 だけど新しい情報だった。

 モンスターにもそういうことが出来る脳があったのだと。

「な、なにしてんだよお前…。人の皮剥ぐとか…お前どうかしてるぞ。」

 どうかしてるのはどちらだろうか。

 見ようとしないその目がどちらを信じようが勝手だけど、皮を剥ぐくらいどちらにせよすることだ。

 必要であれば相手が誰であってもどんな奴であっても。

 感情が遠退く。

 その場から離れて探った。

 もうほとんどを分身が片付けたから、さっきのが最後だった。

「まったく、人間様てのはこれだから。」

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