第21話 忍の恋は難しい 三輪目

 正直惚れた晴れたってのもわかんない。

 恋も愛も、理解出来ない。

 好きも嫌いも無かった頃はあんなにも楽だったのに。

 人間の感情は上手く扱えない。

 どちらが好きかと問われても、才造サイゾウに対してはただ信頼と信用を置ける仲間であり、名をくれたお人様としか見たことがない。

 伝説さんに至れば、無口な敵で伝説の忍だとしか思えない。

 好き嫌いでいえば結局二人とも嫌いじゃないし、今は好きと言いきれる相手でもない。

 この異世界では感情の害を恐れなくていいとは言いきれない。

 忍として息をするなら、何処へ行こうとも感情では何もしてはいけないし言ってはいけない。

 それがわかってるから、今まで気付かぬ振りをしていたというのに。

 まぁ……後付けされた心が惹かれるとしたら多分あの二人ではないだろうけどね。

「あー、もう終わり!仕事でもないこと延々と考えてたってしょうがないっての。」

 うん、と伸びをしてから包丁と食材を手に持つ。

「さ、今晩の料理は異世界風にしちゃいましょ!面倒だから。」

 恋が咲く日があるのなら、きっとこちとらには難しい味がする。

 けれど出来ればその頃は、忍の最終話であり、こちとらの人としての第1話を歩かせて。

 才造でも伝説さんでもなく、あのお方がまたこちとらを名で呼んでくれることを願って

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