第20話 忍の恋は難しい 二輪目

カゲちゃんは二人のことどう思ってるの?」

「どうって…。急に聞かれましても。」

「ほら、何かあったりしない?」

「しませんよ。」

「こう…好きな人ーとか!」

「えぇ…。好きもなにも、才造サイゾウは味方、伝説さんは敵じゃないですか。それだけですけど。」

「えぇ!?才君とは長い付き合いじゃないの!?」

「長い付き合いではありますけど。まぁ、一番信頼出来る忍っていえばそうですね。」

 恋愛っていうのがまず頭にないタイプじゃん!!

 女の子(多分)なのに!!

 男ばっかりそんなんじゃしょうがないじゃない!!!

「じゃぁ、選ぶとしたらどっち?」

「そりゃ才造に決まってるじゃないですか。伝説さん敵ですし。」

「そうじゃないの!一人の男としてどっちなの?」

「もしかして、恋愛的な話ですか?」

「そうよ?」

「あの……忍に恋愛感情なんてあったら仕事出来ないじゃないですか。」

 少しの沈黙が流れ込む。

 愛より仕事っていうことかしら?

 忍ってそんな冷たい仕事なのかしら?

「幾ら好きなお人様でも、あるじが殺せと言うなら泣きながらでも殺さなきゃなんないですからね。それに、感情でその手が鈍ればおのれの命だって危ない。忍が心持っちゃいけないんですよ。所詮しょせん、忍は道具。好きも嫌いもありゃしませんって。」

 淡々と常識を教えるようにそういつも通りの笑みで言う。

 それは何度も繰り返した後のように言い慣れた口調で、優しさを含みながら厳しさと冷たさを隠した何処か気持ちを無理矢理抑えられる感覚を突き付けてくる。

 あなたは道具なんかじゃない。

 そう言おうとしても、口から声となって伝えることが出来ない。

 確かに影ちゃんが言うように忍という仕事はそういう危ないものなのかもしれない。

 でも、それは影ちゃんのいた異世界の話で、今此処ではそんなに悲しい現実なんて無いんじゃないかな?

 だって、忍っていう仕事なんて、ここには無いんだから。

 それなのに、それさえ口から出てこない。

「突然恋愛の話を持ってきたのは、才造や伝説さんのことですか?」

 言いたいことはわかる、と言いたげにそう問い掛けてきた。

「あの二人が一番そういうことに心を持ってかれそうじゃないんですけどねぇ。特に、伝説ともなればそのくらいわかってたでしょうに。」

「あの二人は影ちゃんのこと好きなのよ!」

 そう言えば泣きそうな顔をした。

「知ってます。ずっと前から。それでも、駄目なモンは駄目なんです。」

 知ってたんだ……。

 でもっ、

「この世界なら大丈夫だって、二人はわかってるんじゃないかな?だから、目の前で戦うんじゃなくて喧嘩したんじゃないの?」

「申し訳ありません。」

 そう一言震えた声で呟くと、影ちゃんは影を巻いて消えてしまった。

 その声はとても苦しそうだった。

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