第19話 忍の恋は難しい 一輪目

「体当たりしちゃいましょ!!」

 二人にそう言えば、顔を見合わせて少し困ったような顔をする。

 無口だからどう好きと伝えるのか知りたくなる。

「さぁさぁ!いっておいで!」

 背中を押して無理矢理行かせてみた。

 後は見守るだけだわ♪


 まずはサイ君ね。

「手伝うぞ。」

「ん?あんがと。んじゃ、野菜切っててくんない?」

「了解。」

「っと、その間に…。」

 自然と手伝いに回って距離を縮める作戦かしら?

 黙々と料理を作っていき、雰囲気作りも何にもない!

 こんなんじゃ面白くないわ!

 と、そう思っていたその時。

「味見してみる?」

「あぁ。」

 マスクを降ろして食べ、ふっと笑った。

「旨い。」

 その表情といったら…っ!

 それなのに、

「そっかそっか!才造サイゾウが笑ったから今日のは自信有りだね!」

 ニッと笑って喜ぶカゲちゃんに逆に才君が顔を赤くしちゃって直ぐ顔を反らしちゃった。

 その様子すら気付かないでさっさと皿に盛り付けていく。

 今の結構キュンとくる笑みだったのに、影ちゃんにとったらまだまだなのかしら?

夜影ヨカゲ。」

「なぁに?」

 振り向いて首を傾げる。

「好きだ。」

 いきなりそう言った才君に驚くこともしないで、影ちゃんは笑った。

「そりゃ良かった。んじゃ、次は才造の為に作ってあげる。」

 どうやら料理の方だと勘違いしちゃったみたい。

 折角せっかく才君頑張ったのになぁ。

「料理じゃなくて、お前が好きだ。」

「うん?ありがと?」

 そう言い直しても全然効いてないみたい。

 影ちゃんて、ここまできてなんでわからないんだろう?

 ずっと一緒に居たんじゃないの?

 難しいなぁ。


「大丈夫よ!落ち込まないで!」

 才君は顔に手を当てて座り込んじゃった。

 次はセツ君ね!


 ご飯を食べ終わって片付けも終わって。

「どうしたの?んなとこで。ってか、帰んなくていいわけ?」

 説君を見てそう問い掛ける影ちゃん。

「あぁ、そうなの?ならいいけど。」

 何にも喋ってないのに、影ちゃんは説君の声が聞こえるみたいにそう言ってる。

 わかるのかなぁ?

「好きって…何が?」

 わぁ、もうぐ言っちゃったのね!

「こちとらが?そりゃどーも。」

 えぇー、やっぱり普通なのね…。

 しかも、説君に背中を向けて武器の手入れを始めちゃった。

 すると、説君は後ろからぎゅっと影ちゃんを抱き締めた。

「なになに?甘えん坊さんだねぇ。」

 説君の腕に手を添えてそう笑う。

「これが伝説の忍だなんて、信じらんないよねぇ。」

 クスクスと笑いながらそう言う影ちゃんは、嫌がる風でもないし、寧ろいい感じなんじゃないかな?

 もしかして、スキンシップが好きなんじゃないのかな?

 でもまだ気付いてない!


 まだまだ頑張って貰わないと!

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