第17話 原因

「いい加減止めんか!」

 二人の忍をバシッと叩いてそう怒鳴った。

 どうやって二人の手をほどいたのかは一瞬だったのでわからないが、才造サイゾウは兎も角伝説の忍を素手で叩ける夜影ヨカゲをある意味尊敬する。

 怖いもの知らずか、お前は。

「いつまでんな言い合いしてるつもりなの?巻き込まないでくれる?」

「今の喧嘩言い合ってたの!?」

「だから通訳がいるって言ったじゃないですか。」

「声出てたか?」

 口も開いてるように見えなかったし。

最早もはやここまでの忍となれば声も口も要りませんからねぇ。会話なんて。」

「ハイレベルな会話だな。俺には出来そうにねぇわ……。」

「空気を読めりゃ伝説さんとの会話なんて簡単なものですよ。」

 パタパタと手を振りながら「一日休めば治る」くらいの軽さでそう言ったが、その後ろではまだ戦いが続いていた。

 もしかして俺らの住んでるこの世界よりもコイツらが住んでた世界の方がヤバイんじゃないか?

 前はその異世界に行ってみたいとか思ってたけど、多分即死する。

「そういや、なんで喧嘩なんかしてんだ?」

「この空気は面倒なんで読みませんよいちいち。」

「なにその都合の言い耳は。いや、目か?」

「えへへ、無口はこれだから便利…痛い痛い痛い!!才造!!」

 ガシッと頭を掴まれてギリギリと握り潰そうと力を込められている。

 多分握り潰すことはないだろうがかなーり痛そうだ。

 それでも笑顔を崩さないのは夜影にはそういうプライドでもあるのかもしれない。

「ワシの話くらい聞け。」

「無口が何か言ってるよ(笑)、痛ぁっ!?」

「お前には喋ってんだろうが。」

「待って待って潰れる!!潰れちゃう!!おもに心が!!」

「ワシの手にはそんな力はない。」

「あっはは、あったら先にその手を潰すわ、いや冗談冗談!!力強くしないでぇー!!」

 わちゃわちゃしているが、話で聞いた忍だよな?

 暗殺とかやってる忍だよな?

 少し経ってから。

 アジトには三忍さんにんがちょこんと椅子に正座している。

「喧嘩の原因としては、どうやらこちとらの取り合いだったようで。」

「と、取り合い?」

「なんか、伝説さんはこちとらを連れていく気だったみたいでして才造はそれを阻止しようとしたらしいです。ごめんない、こちとらにもよくはわかりません。」

 夜影を挟んで座る喧嘩してた忍は否定を示すわけでもなく黙ったままだ。

「で、伝説さんはあるじが既にいらっしゃって、こちとらを個人的に拉致らちしようとしたってだけで、主の命令で行った行動ではないのでそこの心配は要らないようですが、今ちょっとこちとらが身の心配をするべきですねコレ。怖や怖や。」

「ということは、雇うことも出来ない…と。」

「ですです。一応敵なんですが今のところ敵対視されているのは才造だけっていう笑える状況なんですよね。あ、すみませんこちとらは笑ってる場合じゃなかったですね。」

 と言うが真隣に居るのだから危ないも何も口だけで本当に危機感ってのがねぇなコイツら。

「ってかさ、個人的に拉致ろうってのが可笑しくない?あんた何企んでんのよ。何されたって従う気はないかんね?」

 伝説の忍にそう呆れたように食い付く夜影の話を聞いてか聞かずしてか、無視して頭を撫で始める。

 それを才造はギロリとこれでもかと睨み付ける。

 夜影は諦めたのか溜め息をついて机に伏せてしまった。

 喧嘩の原因の中にまだ何かあるような気がするが。

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