第16話 三忍再び

 街の中、歩いていると突然 夜影ヨカゲが武器を構えて毛を逆立てた。

 その様子に遅れて才造サイゾウが構える。

 今のはどうやら才造の感知が出来ないレベルの何かだったせいなのかもしれない。

 もしそうなら今までと比べ物にならない相手だろう。

 警戒しながら周囲を見回すが、何も変化がない。

 しかし夜影はずっと一点を見つめて構えている。

 今までの様子と違うのもわかるが、一体何を見つめているのかわからない。

 と、風が唸って刃のぶつかる音が響いた。

 そこには見知らぬ男が夜影と刃を交えている。

「あんた、こっちに来てたんだね。」

 無言で後方へ引いた。

「知り合いか?」

「あんた様にお話致しました伝説の忍さんですって言ったらわかりますかね?」

「えぇ!?伝説の!?」

「恐らく。」

 話を聞いて3日しか経っていないのだから覚えている。

「あ、ちなみに伝説さんも無口…いや、知らないけどまったく喋んないから会話は難しいと思いますよ。通訳要りますから。」

「通訳!?」

 伝説の忍は武器を下ろすと、ゆっくり夜影に向かって歩く。

 夜影は首を傾げて後退った。

 代わりに才造が夜影を庇うように前に出て伝説の忍を睨み付ける。

 才造の前で止まり睨みあいが始まった。

 この無口同士が向き合うと本当に無言の威圧で攻撃しあっているようにしか見えない。

 というかいっきに空気が重たくなった気がしてならない。

「あー、無言の喧嘩始まっちゃった…。重っ苦しいことこの上ないわ。」

 夜影は武器をしまうと溜め息をついてそう呟いた。

「これは何なんだ?」

「わっかんないです。何か、お互い気に食わないことがあるんでしょうね。ってか、忍のクセに平和な喧嘩してくれちゃってますね。どうします?近くの喫茶店で終わるの待ちます?」

「終わるのか?これ。」

「終わ…るんじゃないですか?多分。」

 触れればきっと無事で帰れない気がしたので二人を置いてけぼりにして移動しようとしたら、夜影の両腕が掴まれて引っ張られた。

 右には才造、左には伝説の忍。

「あ、あれー?もしかしてこちとらが喧嘩の原因ー?」

 二人は睨みあいながらも夜影を離さない。

 俺はどうすることも出来ない。

 夜影も動けない。

 どうするんだこの状況。

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