Ep.2

「凄いな…蒼依は。」

「だよな!俺なら絶対無理だ。幾ら親の手伝いだとしても、お小遣いとかバイト代貰えたとしても。」


口から零れた言葉に、僕は驚いた。

自然、悠樹への返事も数テンポ遅れる。


「…………っ。え、あ、そうだね。僕にも真似出来ないな…。」

「…バイト、始めてみるかな。」


自分のことでいっぱいだった僕の耳に、彼の最後の台詞が届くことは無かった。


――数十分後。


「お待たせしました。ディナーセットとトマトスープになります。」

「ありがとーございマース!…てあれ?黎、お前のデザートは?」

「あぁ、このセットのデザートは……」

「基本的には食後にお出しする様になっています。お客様の方で言っていただければお好きなタイミングでお出ししますよ。」

「へぇ、ありがとう、蒼依ちゃん。」

「いえ、それでは失礼します。ごゆっくり。」


彼女は、目線で悠樹に、「名前呼びしないで下さい、先輩。」と言っていたような気がした。しかし、当の本人はそんなの気づいていないとばかりに、届いた料理に夢中になっている。


「………………。ゴクッ。うん。久しぶりに食べたけど、ここのやっぱり美味い!確か、今日はナンおかわりし放題だったよな……。黎、そこのメニュー表、取ってくれ。」


無言でメニュー表を渡す。

悠樹は、ナンを片手に受け取ると、「サンキュッ」と口早にいい、そのまま食べながらメニュー表の目的のページをめくる。


「モグモグ…ゴクッン。うんやっぱりそうだ。すいませーん!」

「ただいま伺いますのでお待ちください!」


待っている間にも、口にナンを運んでいる彼を見て、よっぽどお腹が空いてたのかなぁ、なんて、呑気なことを考えるが、まだメインである鶏肉のチーズドリアが来ていない。ということは単純に、少しでも蒼依と話がしたいと言うことだろうか。


ということを、頭の隅で考えていると、


「お待たせ致しました。鶏肉のチーズドリアです。伝票はここに置いておきますので、会計の際にはレジに持ってきてください。」

「あ、ナン、追加で!」

「かしこまりました。今すぐお持ちしますね。」

「はーい、待ってまーす!」


彼女が席から離れたあと……


「…そんなに食べられるのか?お前。」

「男子高生の食欲を舐めてんのか?余裕だぜ!」

「……いや、僕も男子高生なんだけど。」


確かに、周りよりは量が少ないかもしれない。とはいえ、一般男性よりは食べている…はず。それに、男子高生だとしても、彼の食べている量は多い気がする。


「いんだよ、お腹空いてんのは事実だったし、蒼依ちゃんと話せるなら、多少は無理したって。」

「食べ過ぎでお腹壊したとか、動けないとかやめてよ。」

「大丈夫!さすがにそこまでは食わねぇから。」


と悠樹は笑いながら言った。

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