Ep.2
「…悠樹、案外凄かったのな。」
「え、なんか言ったか?」
「い、いや、独り言。あっはははは。」
「そっか。あーでも、音ゲーはやっぱムズいなぁ。範囲狭いならともかく、これ結構広いし。俺リズム取るの苦手だからさ、マーカーが出る順番と方向記憶して、やってるんだよなぁ。黎はリズゲー得意ってだけあって、音楽あると尚更楽だったりすんの?」
「うん、まぁ、音があった方がリズムは取りやすい…かな。でも、無くても取れる人は取れるだろうし、1回体に叩き込めば音が無くても最悪…。」
「へぇ、俺には大変な事やってるようにしか…。耳で聞きながら目で見て、体使うんだろ?考えただけですげぇ…。」
音ゲーって本来そういうゲームだと思うのだが、どうにも難しいらしく、唸りながら首を傾げている。
「ほら、それより、次の曲。悠樹が選んで。」
「……っ、あ、そうだった。まだゲーム途中だった!」
…あれ?今の会話ってゲームの存在忘れるレベルだった?
「んー…どれが難しくてどれが簡単か分かんねぇし…取り敢えず知ってる曲……あ、これにしよ!」
「その曲、前にお前が好きって言ってたやつ?」
「そうそう!この曲、完全に頭に入ってっから、これならお前に勝てると思ってさ。」
「ふーん……。」
ならば、世の中はそう簡単では無いことを教えてあげよう。
それぞれ難易度を決める。
僕は当然のようにマスターを選択。悠樹の方は、この曲を相当やり込んでいたらしい…マスターを選択していた。
「よし、今度こそお前に勝ってやる!」
「そんな簡単に勝たせるわけ…!」
いつの間にか、お互い本気モードだった。
〜♪︎♪〜♪︎〜♪︎♪〜♪︎
曲が始まり、二人とも一瞬静かになる。
だがその直後。
ダダッダダッダダダーダッダッダッ
マーカーに合わせてボタンを押す音が隣から聞こえた。
この曲の冒頭、難易度がマスターになるとマーカー数が一気に増えて、覚えていなければとてもじゃないが追いつけない。たとえ覚えていたとしても、ボタンではまず全てを拾う事など出来ない。
―― そう、思っていたのだが。
隣から聞こえてくる、ボタンを叩く音は、その全てがぴったりのタイミングだった。
危うく落としそうになるが、ギリギリの所で拾っていく。
そのまま曲はエンディングを終え、結果が表示される。
「まーた負けたぁ!」
「いや、でも、かなりの僅差だよ。」
実際、若干こちらの方がジャストの数が多いとはいえ、互いのミスの数、コンボ数とも大して変わらない。
「でも、負けは負けだろ?あーあ、自信あったんだけどなぁ。」
「でも凄いよ。この曲の冒頭って、かなり難しいし。やり込んでた?」
「このゲームやる時は、必ず選んでたからな。全部体が覚えているんだと思う。それに、あの冒頭ってドラムの音に合わせてるんだろ?このバンドのドラム、俺好きでさ。結構聞いてるんだぜ。」
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