Ep.2 繋ぐと絆ぐ

――放課後。


「やっと終わったぁ!黎、ゲーセンで遊んで、その後いつもの所行こうぜ!」

「言うと思った(笑)でも、いつもの所でいいの?僕が奢るって言っているのに。」

「だからこそだよ!それに、あそこお気に入りなんだ。お前もだろ?」

「まぁ、確かにあそこのはどれも美味しいよね。」


中学の頃は待ち合わせによく使っていた、知り合いが経営している喫茶店を思い出しながら、今日は何を食べようか考える。


「それだけじゃない。時々お店を手伝っている、お前の幼馴染。可愛いし、見るだけで癒しを貰える…!久しぶりに顔を見れる!」

「あはは……。」


思わず苦笑いしつつ、幼馴染の事を思い出す。


一つ年下で、元々親同士の仲が良く、小さい頃はよく遊んでいた。僕が中学生になり、ちょっとした…個人的な事情があるまでは。

その事があってからは、僕から避け続けてきたので、今彼女がどうしているかは分からない。

それに、高校に入ってからは、彼女の両親が経営している喫茶店自体行かなくなったため、正直どうなっているかなんて答えようがない。


「幼馴染ちゃん、今高1?だよな?」

「…確か、そうだったと思う。」

「更に可愛くなってるんだろうなぁ。大人っぽくなって、美人さんになって、同期の男子達にモテモテなんじゃねーの?」

「さぁ、どうだろう…。」

「想像力が足りねーよなぁ、本当。」


何を言われても、本当に分からないのだからしょうがない。それに、そんな資格、きっと無いのだ。

実を言えば、未だに会うのは少々気まずい。彼女と顔を合わせた最後の日、僕はかなり酷いことを言ってしまった。当時は余裕が無かったとはいえ、今思えばあそこまで言う必要は無かったのだから。

だから、悠樹には悪いが、いないで欲しいと思っている自分が少なからずいるのである。


「お前は気持ち悪いくらい想像力が豊かだよな。あ、もしかして、ここの入試もその想像力で受かったとか?」

「んなわけねーだろ!実力だよ!じ・つ・りょーく!そりゃ、自己採点で微妙だったから、少しは運も否定は出来ないけどさ…。だとしても、だ。九十パーセントは実力だ。」

「ホントかなぁ(笑)」

「お前が一番分かってるだろ?!俺に教えてくれたの、お前自身なんだから!」

「ま、確かにそうなんだけど。時々、信じられなくなるんだよ。お前が、実力で、この学校を受かった、なんてさ。」


さりげなく会話の内容をすり替えて、戯れながらゲームセンターに行く。

高校生は寄り道してはいけない、なんて言っている教師もいるが、学校の校則にそういった内容の項目が一切無い為、殆どの生徒が何処かに寄り道している。

その中でも、ゲームセンター、カラオケ、ファーストフード店は人気らしく、学校終わりのこの時間と部活終わりの夕方頃は、同じ制服を着た人達でごった返している。




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