Ep.1

「あーもー!そんな顔されたら冗談でも何でもしにくくなるじゃんか!」

「え?あ、ごめん。考え事してたから…」

「だーかーら!俺の前では遠慮するなよ!細かい事とか、難しいことはわっかんねぇけど。1人で解決しようとすんな!あと、ごめんも無し!癖になってるんなら直せ。手伝うから。」

「うん。ありがと…。」


本当、彼に勝てる気がしない。認めているからこその冗談だったり罵声だったりする。そもそも気を許して無かったら、普段から話すなんてこと自体が有り得ないのだ。

それを理解 ――しているのかしていないのか、悠樹は僕の顔を見てニカッと笑う。


「よっしゃ、最後の授業も頑張るぞぉ!」

「今日、帰り何処か寄る?」

「黎がそんな事言うの珍しいな。」

「何となく、奢りたいなって思ったんだけど。やめようかな…。」

「奢ってくれんのか?!なら行こうぜ!ゲーセンでも、喫茶店でも、ファミレスでもさ!」

「悠樹の好きな所でいいよ(笑)」

「マジか!やる気出てきた!」

「簡単だなぁ。」



思考回路。とは言わず、代わりに軽く笑って誤魔化す。


―― 今日の出来事が、僕の運命を変えるとは、まだ知るよしも無かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る