Ep.1

「絶対馬鹿にしてるよなぁ…。」


悠樹がぶつぶつ文句を言っているのを横で聞きながら、先程の会話を思い出していた。


『珍しいなって』

『凄く謙遜する人』


実際、そんなんじゃない。珍しい、とはよく言われるし、最近はあまり気にしなくなっていた。ただ、そのあとに言われた言葉が、まるで過去を抉り出す刃かのように刺さっていた。酷く自身を、自分の心身をボロボロにしたい気持ちが渦巻き始めていた ――。


「あと一つで今日は終わりだ!…はぁ、帰りてぇー。」

「…前後の台詞合ってないよ。」

「だってさぁ!授業面倒なんだよ!勉強すんのも正直たるいし。」

「この学校、進学校で、地味にレベル高いの、志望校決める時に話したはずだけど。」

「んなこと分かってる。それでも!勉強嫌なんだよ!俺はお前がここに行くって言ったから、死に物狂いで頑張ったんだからな!」

「……。一応、ありがとう。」


本当、良い友人を得たものだ。あの時、彼がしつこく来てくれなければ、今の友情は無かったのだから。


「一応ってなんだぁ?!」

「…台無しだな。」

「何が?…って、そうじゃなくて、さっきから俺の事、ずっと馬鹿にしてるよな?!なぁ!」

「…あはは。さぁな。」


最低限の人間関係を持っている…とは言い難いが、それでも、学校で関わるやつが一人居るだけで充分満足だ。

本来なら、僕の性格では…………。

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