Ep.1

そのまま賛成・反対派の意見及び議論が始まり、内心複雑な感情を抱えたまま、僕はなぞるように先程と同じ意見を言った。


「反対派の意見は以上です。質問がある方はいますか?」

「はい。」


賛成派の男子が手を挙げた。


「そちらの方、どうぞ。」

「はい。では、二つほど質問を。」


まるで、取ってつけたような、よく分からない質問だった。自分なりに解釈して返答する。周りの人達も、彼がした質問の意味、そして必要性が理解出来なかったようだった。


時間はどんどん過ぎていき、あっという間に合同授業は終わった。

結果、というか意見を言った時点で ――だろうか。反対派が勝った。

正直、拍子抜けだった。あんな意見で、どうして。

真剣に考える人なんて、いない、よな…。あの時も、今も…。


「また考え事してんのか?」

「…いや、ちょっと昔の事を思い出してただけだよ。」

「……あんまり思い詰めるなよ。今回の授業とあの時とはまるで別物なんだからさ。」

「分かってる。」


それでも…。


「あ、いた。日比谷くん、さっきはありがとう。」

「えっと…。」

「あ、ごめんなさい。まだ名前を言ってなかったよね。私は百川星来です。よろしく。」

「あの、ありがとうって…?」

「さっきの授業。代わりに意見を言ってくれてありがとう。本当はみんなの意見をまとめて、私が言おうと思っていたから、凄く助かりました。」

「あ、うん。ごめん、でしゃばったみたいになってしまって…。」


後ろから急に声を掛けられ、振り向いた先に百川さんがいたことに内心パニックになっていたせいか、まともな返事が出来なかった。

隣では口をぱくぱくさせている。緊張しながら、どう会話に割り込むか考えているんだろう。


「…ふふっ。」

「……?」

「あ、ごめんね。感謝された後に謝る人、珍しいなって思って。」

「…ごめん、会話になってないよね。」

「そうじゃないの。凄く謙遜する人なのかなって。…あ、ごめんなさい、私の方が失礼なこと言ってるよね。」


謙遜…なんかじゃ、ない。

ただ、僕は、自分のことが…。


「…て、さっきからお互いに謝ってばかりだね。気分下がるし、この話はもう止めにしよ!」

「うん…。」

「次の授業まで時間がないから、私はそろそろ行くね!また、今度授業か何かで一緒になったら、その時はよろしくね!」


そういうと、彼女は足早に遠ざかって行った。

それと同時に、極度の緊張状態だった友人は、糸が切れたかのように表情筋が緩んだ。


「やっぱり可愛いよなぁ、美人だよなぁ。百川さんと仲良くなりたいなぁ!」

「……連絡先くらい教えてもらえば良かっただろ。」

「すっかり忘れてた!つい見惚れてしまった…。」

「悠樹のそゆとこ、僕好きだよ。悠樹らしくて。」

「そなの?んじゃいっか!って、それ遠回しに馬鹿にしてないか?!」

「してないよ(笑)大真面目に言ってる。」

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