Ep.1

僕の思っていた事と同じ事を考えた生徒がいたらしい。


「先生、反対派である私たちは『学校に行かない』理由と目的、乃ちメリット的な意見を考えるという事でいいですか?」

「そう考えたなら、それについて話し合って下さい。」


…つまり、適当に考えたのか。で、細かいことを決めるのは面倒だから、そこは生徒に考えさせようと。


「分かりました。その場合10分では少々足りないので15分に伸ばして頂けないでしょうか?」

「…分かりました。それでは、最初の話し合いの時間を5分延長して15分にします。それでは続けてください。」

「ありがとうございます。」


そしてその生徒は立ったままこちらへと振り返る。


「今から5分間、近くの人と相談して話し合ってください。その後、それぞれ出たものをこちらでまとめていきます。何か意見がある人は挙手してからの発言をお願いします。」


なんで仕切ってんだ。そう聞きたかったが、周りの人間はまるで当たり前みたいな顔をしている。というより、この人の意見に逆らうつもりはありませんみたいな、謎の空気。

そして皆それぞれ話し合いを始めている。仕方なく挙手するのを諦め、顔を伏せて寝たフリをする。


「なぁ、見たか?さっきの!」

「……?さっきのって?」

「先生に色々質問してた人!百川さんだよ、百川星来!」


…だから誰も反論しなかったのか。

百川さんは正しい人、みたいな認識でもあるのか?


「近くで見る機会全然無いし、今のうちにシャッター切りまくらないと!」


…テンションたっかいなぁ。


「ほら、お前もちゃんと見ておけって!容姿端麗、文武両道のあの姿を!」

「今は授業中だから、あまり興奮するな。」

「今この時間だからだよ!この瞬間しかチャンスは無い!」


あぁ、もうダメだ。頭半分イカれてやがる。


「……あのさ、まだ何を言うのか決めてないし、せめて内容決めてからにしてくれ。」

「へ?あ、忘れてた。ごめん(笑)」

「……その百川さんの評価落としたく無いなら意見考えた方が無難だと思う。」


評価も何もまだ0だし、このままだと最初からマイナススタートで最悪だけど。


「よし、考えよう!俺も百川さんと仲良くなりたいし!!」

「その下心丸出しなの隠してからな。」

「大丈夫!真剣に考える!問題ない!」


中身スカスカな脳みそで頑張れよ。

とは言わずに飲み込む。フラグ立てまくってるのもあえて突っ込まないでおく。

悠樹の発言にいちいちツッコミを入れていたらキリがない。


「で、何について考えるんだっけ?」

「…………。ごめん、僕の認識が甘かった。」

「え、なんだよ。なんでそんな顔すんだ?」

「い、いや、何でも無い。僕達は『学校に行かない』理由と目的を考えるの。」


もう、疲れた……。

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