Ep.1

頭の隅でそんなことを考えつつ、鐘が鳴る直前に教室に着く。


「今度は間に合ったな!」

「いや、一応さっきも…。どっちにしろギリギリだけど。」


席は…クラス関係なしに自由か。それなら教室と同じ所に座ろう。


「黎、席どうする?」

「僕は教室と同じ所に座るよ。」

「えー、つまんねーやつ。たまには真ん前行かね?」

「行きたいなら1人で行け。」

「ノリ悪いなぁ。……お前の為を思って言ったのになぁ。」

「今なんか言った?」

「何も言ってねーよッだ!それより早く座ろうぜ。」


今日の特別授業はなんだろうか。地味に好きなんだよなぁ、この時間。



――キーンコーンカーンコーン――



――ガラガラ。


合図と同時に静かになった教室によく響く。

今日の担当は……生徒指導の先生か。てことはこの時間ずっと話聞いてるだけ、じゃないといいなぁ。


「授業を始めます。本日は、『学校に行く理由と目的』についての議論及び批判をして頂きたいと思います。賛成派・反対派については、今いる席が右なら賛成派、左なら反対派の批判をそれぞれ考えてください。また、あまり後ろの席だとまともに参加できないと思うので、前から1、2、……6列目を一番後ろとします。それより後ろの人は前に来てください。」

「先生、どっちから見て右と左ですか?」

「君たち生徒から見て右と左です。」

「分かりましたー!」


生徒のひとりが返事したのを合図に、それぞれ動き始める。

僕と悠樹は前に移動しつつも出来るだけ後ろの席に着く。

今回の議題、正直なところ、難しいというよりは好きじゃないと思うのが先だった。基本的に一人で行動する事を好む僕にとって、理由はともかく目的はあまりいい考えを持っていない。

よりによって、苦手なものの塊がごっそり来るなんて…。


「まずは10分間でそれぞれの意見をまとめて、質疑応答についてもある程度考えて下さい。また、それぞれを言う人も一緒に決めてください。」


――ガヤガヤ


「なんか意見あるか?」

「無い。というか参加したくない…」

「いつも授業を真面目に受けている人の台詞だとは思えませんなぁ?」


…なんのキャラだよ。

そう思いつつ、スルーして話を続ける。


「…そっちこそ、なんかあるか?」

「俺?議題に関してはわかんない(笑)でも、百川さんは可愛い。そして今回の議論は勝った!」

「……は?」

「やっぱり見てなかったのかー、いるんだよ、こっち側に!」


僕達は、自分たち側から見て左側にいるので、反対派である。

そもそも、理由と目的についての議論なのに賛成と反対って……意見の出し方が今ひとつわかんない。反対ってことは、「学校に行かない」理由と目的を考えろってことなのか…?



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